2017/09/08
防災・危機管理ニュース

国土交通省は、水位計の低コスト化と河川管理の強化を進める。鶴見川水系である横浜市の鳥山川において、クラウド型・メンテナンスフリーの低コスト水位計の実証実験を開始。7日に公開された。実証実験には12チームが参加。日立製作所や富士通、沖電気工業、NTTドコモ、NECネッツエスアイなど企業や研究機関21者がチームを組んでいる。国交省は低コスト化により、中小河川への水位計普及による河川管理強化を狙う。
水位計はオーダーメイドであったり、専用回線を敷設する必要があったりなど、設置に数千万円のコストがかかることが多い。このため都道府県や市町村が管理する中小河川での導入が進んでいない。7月の九州北部豪雨では福岡県朝倉市の14の中小河川で水位計は設置されず、2016年台風10号被害において岩泉町の高齢者グループホームで死者を出すなど被害のあった岩手県の小本川も1カ所しか設置されてなかった。
今回の実証実験では100万円以下の低価格であることや、コストを抑えるため無給電で5年以上稼働するメンテナンスフリー、得られたデータのクラウド処理などが条件となった。条件を満たすため、電源は太陽光発電システムや蓄電池を利用。水位計測は川の水と機器が接触する直接検出式や水圧式以外に、非接触方式として、電波式や超音波式、カメラ撮影した動画で計測する画像式もある。
鳥山川にかかる橋に6チーム、堤防上に6チームが機器を設置。データはクラウドに保管され、パソコンやスマートフォンで確認できる。国交省では今回の実証実験のほか、低コストの水位計の普及を目指した検討会も開始する。
(了)
リスク対策.com:斯波 祐介
防災・危機管理ニュースの他の記事
おすすめ記事
-
津波による壊滅的被害から10年
宮城県名取市で、津波により工場が壊滅的な被害に遭いながらも、被災1週間後から事業を再開させた廃油リサイクル業者のオイルプラントナトリを訪ねた。同社は、東日本大震災の直前2011年1月にBCPを策定した。津波被害は想定していなかったものの、工場にいた武田洋一社長と星野豊常務の適切な指示により全員が即座に避難し、一人も犠牲者を出さなかった。震災から約1週間後には自社の復旧作業に取り掛かり、あらかじめ決めていたBCPに基づき優先業務を復旧させた。現在のBCPへの取り組みを星野常務に聞いた。
2021/01/21
-
台湾をめぐる米中の紛争リスクが高まる
米国のシンクタンクCouncil on Foreign Relations(CFR)は、2021年に世界中で潜在的な紛争が起こる可能性を予測する最新の報告書を公表した。報告書は、台湾問題における米国と中国の深刻な危機を、世界の潜在的な紛争の最高レベルとして初めて特定した。
2021/01/20
-
これからの国土づくり 「構想力」と「創意工夫」で
政府の復興構想会議のメンバーとして東北の被災地を訪ね、地域の再生や強靭な国土づくりに多くの提言を行った東京大学名誉教授の御厨貴氏は当時、これからの日本の行方を「戦後が終わり、災後が始まる」と表現しました。あれから10年、社会はどう変わったのか。いつか再び起こる巨大地震をめぐり、政治・行政システムや技術環境、市民の生活や仕事はどう進歩したのか。これまでを振り返ってもらいながら、現在の課題、今後の展望を語ってもらいました。
2021/01/14