2020/11/25
インタビュー
インタビュー 元空自幹部 奥能登広域圏事務組合危機管理官 佐藤令氏
石川県奥能登広域圏事務組合で、元航空自衛隊の幹部が危機管理担当者として手腕を振るっている。広大な面積を抱えながらも、少ない職員で対応に当たらなければならない過疎地において、組合職員や市町の職員に呼び掛けているのは感染防止の徹底だけではなく、感染者が多数発生することを前提としたBCP思考への切り替えだ。
平時において危機管理担当者がすべきことは何か。その行動から学べる点は多い。
![](https://risk.ismcdn.jp/mwimgs/9/6/670m/img_9603b7894fb29eb777d12e601d85c5a75623788.jpg)
元航空自衛隊1佐の佐藤令氏は2019年の10月に自衛隊を退官し、広域圏事務組合で全国初の危機管理官に就いた。航空自衛隊では防災担当として政府防災訓練計画の策定や運営に携わり、退官直前は、石川県輪島市内にある輪島分屯基地で日本周辺の空域における他国の航空活動をレーダーにより監視する第23警戒群司令・輪島分屯基地司令を務めた。地域の人々から頼りにされる自衛隊を目指し、「まちづくり活動」にも積極的に参加。輪島市をはじめさまざまな団体と交流を持ち、その縁から退官後に奥能登の2市2町(輪島市、珠洲市、穴水町、能登町)でつくる広域圏事務組合の職員として採用されることになった。
一般職員すら十分確保できないなか、山間地域の小規模自治体が、防災や危機管理の専門家を採用できるメリットは大きい。しかし、小規模自治体が単独で職員を新規採用することは財政的に難しい。その点、2市2町でつくる広域圏事務組合での採用なら、人件費を分担することが可能になる。こうして全国初の事務組合の危機管理官としての挑戦が始まった。
彼の取り組みから組織の危機管理担当者が学べるポイントをまとめた。
1. 平時からのつながりをつくる
佐藤氏は、当初、広域圏事務組合の危機管理官として何をすべきか、何ができるのかに頭を悩ませたという。輪島市の職員とはつながりがあっても、他の1市2町の職員とは会ったこともなく他人同然。「あいさつに行ってもいきなり『おたくの計画はおかしい』なんて指摘ができるはずはありませんし、何を話していいかも分からない。2カ月ぐらいは何もできない状況が続きました」(佐藤氏)。
そんななか役に立ったのが、基地司令だったときに行ったまちづくり活動の経験だった。
「危機管理においては、平時の連携が何より大切だと改めて思いました。広域圏のなかで、お互いに何かあったら助け合いましょうと言っているのに、普段は横の連携はゼロ。消防だけが一生懸命やっているのですが、その消防も各市町村の採用なので、消防本部以外では連携が弱い。このことが最大の課題と感じました」
そこで、他の市町の防災・危機管理担当職員に声をかけ、まだコロナの感染拡大が本格化する前の今年2月に防災担当者だけの意見交換会を企画した。自分たちの取り組んでいることや課題を自由に話し合う。その後は軽く飲み会を開催。この意見交換会から、各市町の担当者との関係が劇的に変わった。「何でも話せる関係になっていったと思います」と、佐藤氏は当時を振り返る。
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