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ベルフォアジャパン代表取締役社長 加藤道久氏

 

Profile 【かとう・みちひさ】1973 年生まれ、宮崎県出身。東北大学大学院修了後、富士通株式会社入社、半導体事業部で携帯電話などに使われるフラッシュメモリの研究開発に携わり、米国、上海など海外拠点の駐在員も経験。12 年に退社し外資系ベンチャーなどで勤務後、18 年ベルフォアジャパン入社。災害復旧本部長を経て23 年7 月代表取締役社長就任。


災害復旧専門サービスのベルフォアジャパン(東京都江戸川区)は昨年、独自営業による顧客開拓に乗り出した。これまでは共同出資者の東京海上日動火災保険を顧客窓口としてきたが、協業体制の変更を機に直接の市場アプローチを開始。サプライチェーン強化に対する社会的要請の高まりを背景に、BCPの実効性を確保する手段として自社のサービスを訴求する。代表取締役社長の加藤道久氏に今後の市場戦略を聞いた。
※本記事は「月刊BCPリーダーズvol.72(2026年3月号)」に掲載されたものです。

――世界最大級の災害復旧専門会社ベルフォアグループは、どのような経緯でスタートしたのですか?
ベルフォアのサービスは1979年、ドイツで発祥しました。設備製造大手のシーメンスと保険のアリアンツ、ミューニックリーが共同で立ち上げた保険会社が、機械設備の復旧に特化した子会社を設立したのが始まり。この保険会社はシーメンスが販売する産業機械の保険を引き受ける会社でしたが、保険金を支払うだけではなく、復旧という選択肢を提供するために被害調査の技術を磨いたのが出発点です。

火災現場はさまざまな化学物質で汚染されていますから、被害調査には化学の専門知識が不可欠です。そのためベルフォアには現在も、化学系の研究者・技術者が大勢在籍している。火災や水災で化学物質が漏えいすると、日本を含め世界中からミュンヘン郊外のラボへサンプルを送り、成分分析や除去方法の提案をしてもらうこともあります。

被災設備の調査・復旧は化学知識が必須

――保険会社が機械設備の復旧に特化した子会社を設立したのがルーツということですが、被害状況を調査・分析し迅速な復旧につなげるのはBCPに通じます。
工場の機械設備は、日頃はメーカーやメンテナンス会社が面倒をみているでしょう。摩耗したパーツの交換などは手慣れているかもしれない。しかし、火災となると話は別です。

火災後の設備は汚水や消火剤、発生したガスや煤などにまみれています。放っておけば汚染や腐食が進行する。その度合いを見極めて安定化処置、適切な洗浄、汚染除去を行う必要がありますが、見てもわからない、見切れないとして全面交換してしまうケースが大半です。

機械設備の交換が多いほど調達に時間がかかり、当然、復旧コストは増大します。復旧期間が延び、ビジネス機会の損失も膨らんで顧客の収益も損なわれる。被災企業のニーズとしては、保険による経済損失の補てんは重要ですが、それだけでは不十分です。工場を迅速に復旧しないと生産を再開できません。

そこを一体的なソリューションとして提案したのは、おそらくベルフォアが初めてでしょう。当時はかなり先進的な価値だった、というより、現在のBCPでもそこに具体的な手を打っている企業は少数です。ベルフォアがスタートして40年以上経ちますが、サービス価値はむしろ上がっていると思います。

●専門的な被害調査の例

画像を拡大 被害の程度と影響を汚染マップと復旧可否リストで提示。これをもとに最適な復旧プランを提案する
供:ベルフォアジャパン

――日本では2004年、東京海上日動火災保険との共同出資によりベルフォアジャパンが発足。日本は『災害大国』といわれるようにさまざまな災害がありますが、市場環境をどうみていますか?
当社のサービスの主軸はやはり、工場火災で被害を受けた機械・電気設備の被害調査と復旧です。ただ、最近はゲリラ豪雨の多発にともない水災からの復旧ニーズも増えている。また、製造業だけでなく、医療・介護施設やホテル・小売・飲食などの他業種でも我々のサービスが求められると思っています。

そこに応えるには、何をおいても当社のような災害復旧専門会社の存在を認知してもらわないといけない。それが現在の最重点課題です。

例えば災害で建物が被災したら、企業は取引先の建設会社に連絡すると思うのです。同様に、機械・電気設備が被災したら取引先のメーカーあるいはメンテナンス会社に連絡する。ただ、それだと先ほど申し上げたとおり、パーツの全面交換、設備の全面入れ替えになるのが実情です。

本来はそこで我々の出番なのですが、悲しいかな、存在が十分に知られていない。市場にプレイヤーが少ないせいもあって、被害を受けた企業の選択肢になかなかのぼりません。災害対応、事業継続の具体的な手立てとして、専門的な被害調査・復旧の必要性、信頼性をもっと訴求していかなければいけないと強く感じています。