一時滞在施設管理者の責任問題の解消は大きな課題となっている(写真は5日に行われた東京都と台東区の合同帰宅困難者対策訓練の様子)

東京都は20日、「今後の帰宅困難者に関する検討会議」の報告書を発表した。2017年12月21日の会合で委員から求められた、一時滞在施設で帰宅困難者の負傷などの際の都独自の補償制度については盛り込まれなかった。都では施設管理者の免責について今後も検討を行っていく方針。

首都直下地震が起こった場合、都内では約517万人の帰宅困難者の発生が見込まれている。一方で2017年7月1日現在の都内一時滞在施設数は918施設、受け入れ人数で32万8374人分にとどまっている。一時滞在施設で帰宅困難者がけがを負うなどの被害を受けた場合、民法上は施設管理者が責任を負うことになっており、施設増を目指すうえでのネックになっている。

2017年12月21日の会合では委員から、一時滞在施設内での被害に備え、条例などで都が帰宅困難者への賠償に代わる補償制度を検討すべきだとの提案が行われ、報告書にどう盛り込むかが注目された。報告書では「民間施設に損害賠償責任が及ばない免責のしくみづくりに向け、引き続き検討を進めていく必要がある」との表現にとどめ、具体策は盛り込まれなかった。都では施設管理者の免責について国に法改正を引き続き働きかけるほか、都で行えることの検討も進める方針。また都が発災時の帰宅を控えるよう呼びかけており、帰宅困難者対策は道路混雑を抑えるなど公共政策的な意味合いがあることから、帰宅困難者の施設内での損害を自己責任で片づけないように留意することが盛り込まれた。

報告書ではさらに一時滞在施設の増加に向け、賞味期限を迎える水や食料の更新費用を補助制度に追加するなど、支援策の拡充を盛り込んだ。要配慮者に対しては一時滞在施設へのベビーフードや粉ミルク、ほ乳瓶の備蓄促進、車いす対応といったバリアフリー化のほか、外国人とのコミュニケーションとしてやさしい日本語の活用を盛り込んだ。「避難」は「逃げる」といったように平易な言葉に換える。また帰宅困難者になっても的確に対応できるような普及・啓発を推進。若年層向けにはスマホアプリの活用などを行う方針。

■ニュースリリースはこちら
http://www.metro.tokyo.jp/tosei/hodohappyo/press/2018/02/20/03.html

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(了)

リスク対策.com:斯波 祐介