若者による夢の持てるまちづくり

将来的に夢の持てる町に変えていくために、今、若手が中心となって「未来トーク」という取組をしています。15歳から30歳(自称)まで、95人の人に集まってもらい、益城町産の農産物を使ったジェラートをつくったり、企業PRの動画をつくったり、復興大使を任命したりとか、斬新なアイデアを出してもらい活動しているところです。
町民の皆さん、特に町の将来を担う若者たちが真剣に自分たちの町を考えてくれるようになったことが震災のプラス面だと考えており、これからは町民の皆さんと行政が一緒になってまちづくりを進めていくというのが私の考えです。
 

西村博則氏 プロフィール
■生年月日
昭和31年5月8日
■学歴
昭和50年 3月  熊本県立熊本工業高校卒業
■職歴
昭和51年 4月  益城町役場入庁
平成24年 4月  健康づくり推進課長
平成25年11月  益城町役場退職
平成26年 5月  益城町長就任

 

本インタビューから学ぶ危機管理トップの心得

冒頭にも書きましたが、このインタビュー内容だけでトップの行動の是非を検証することはできません。ただし、常にトップ、あるいは危機管理担当者が考えておくべきポイントはいくつかあったと思います。ここでは、「現場の判断とトップの決断について」の私見を述べさせていただきます。※あくまで個人的なもので、検証報告書の内容とは一切関係がありません。

現場の判断とトップの決断
前震とされる地震の直後、総合体育館に避難してきた人々が廊下に溢れ出て、「なぜメインアリーナに入れないのか」との批判が浴びせられる中、町長は、現場の職員から上がってきた「天井の一部が壊れている」との報告などから、メインアリーナには避難者を入れないという決断を下しました。本震の後、メインアリーナは天井が崩落し、結果的に、現場からの報告を信じて意思決定したことで大きな人的被害を免れたわけですが、この、現場の判断とトップの決断について考えてみたいと思います。

トップが下すのは決断です。現場は状況を判断をして報告します。この時、トップは、現場の判断が正しいと信じて決断することもあれば、正しいと思ってもあえて別の決断をするという選択肢もあります。あるいは、現場を信じず別の決断をするトップもたまに見受けられますが、重要になのは、原則として現場の状況が一番わかっているのは現場により近い人ということです。したがって、現場の判断を信じて、その判断に基づく行動を支援するということはトップの重要な役割になると思います。ただし、ここで注意すべきは、現場とトップの判断の「ものさし」をできるかぎり合わせるということだと思います。具体的には何について、どういう基準で判断したのか。安全性なのか、受け入れないことへの市民の不満なのか。

当然ですが、危機管理で最優先すべきは命に関わる安全性で、次いで被害拡大の防止、その上で財産や利便性という優先順位になるはずです。どんなに批判されても、危険が回避できるなら、受け入れない判断は正しいと思います。しかし、仮に中に入れず外にいることで凍死する危険性が大きくなる状況なら、違う決断だったかもしれません。「ものさし」をそろえた上で、リスクの大きさ、各選択肢の実行の可能性、本来取るべき行動などを考慮して決断をしなくてはいけません。

他方で、決断は、現場の判断だけでなく、さまざまな別の要素も検討した上で、かつ、限られた時間内で下さなくてはいけません。すべての情報が上がってくるのを待ってから決断したのでは手遅れという事態にもなりかねません。そして決断には責任が伴います。その決断をトップが取ることを早い段階で示すことで現場は判断しやすくなるのだと思います。この責任が何かは、他のインタビューでもいくつか出てきていますので、別の機会に話したいと思います。