東日本大震災では、被災地だけでなく全国的に深刻なガソリン不足が生じた。地震により、製油所や出荷施設が被災したことに加え、東北ではタンクローリーが津波で流され、さらにはガソリンの不足を懸念して全国的に買いだめ騒動が起きるという悪循環に陥った。

編集部注:この記事は「リスク対策.com」本誌2016年1月25日号(Vol.53)掲載の連載を、Web記事として再掲したものです。(2016年11月20日)

2011年3月11日の地震発生直後、JX日鉱日石エネルギー(現JXエネルギー)の仙台製油所では、出荷設備の一部から火の手があがった。社員の多くが避難していたこともあり消火活動が遅れ、15日にようやく開始し、同日鎮火が確認された。同じくコスモ石油の千葉製油所でも大規模な火災が発生した。

直後から大規模な消火活動が行われたものの、鎮火を確認できたのは10日後の21日になってからだった。これらの製油所は1年間再開ができない状況に陥った。さらに、出光興産の仙台油槽所をはじめ、太平洋沿岸にある各社の製油所や油槽所など、生産・供給の拠点が機能を停止した。 

製油所は、原油を受け入れ、重油や軽油、灯油、ガソリンなどの石油製品に精製し出荷する場所だ。大型タンカーで運ばれてきた原油は、まず原油タンクに搬入・貯蔵される。そして、蒸留装置、分解装置、脱硫装置などさまざまな精製工程を経て、日常生活に必要な石油製品に生まれ変わり、一旦、油種ごとに製品タンクに貯蔵され、出荷を待つ。