東日本大震災では、唯一、安全に運べるタンクローリーや、安全に蓄えられる油槽所が多数被災したことが状況をより困難にしたことは想像に難くない。 

東北の油槽所が被災したことで、遠く離れた新潟や山形県酒田市、青森の油槽所からガソリンが被災地へと運ばれた。また、東北全体では、700台あったタンクローリーのうち150台が津波で流された。被災したタンクローリーを補うために、西日本から多数のタンクローリーが被災地へと送りこまれたが、油槽所から被災地までの運搬距離が長かったため、効率的な調達はできなかったという。被災して道路環境が悪かったことや、近年の法改正で、タンクローリーの運行時間などに制限が加わったこともローリーの回転効率が上がらなかった理由と小嶌氏は見る。 

「平時なら油槽所から各ガソリンスタンドに1日に平均3往復ぐらいできていたのが、走行距離が伸びたことで1往復しかできなくなった。これでは、ローリーを仮に300台集められたとしても、3分の1分しかカバーできないことになる」(小嶌氏)。

首都直下地震で40%の製油がストップ
首都直下型地震や南海トラフ地震が起きたら、どのくらいの影響がでるのだろうか。 

製油所や油槽所など燃料の供給拠点は、関東・中部・近畿の太平洋側の拠点に集中している。石油精製の約79%(うち関東が約38%)、油槽所の約60%(うち関東が約26%)、そしてLPG基地の約84%(うち関東が約36%)が太平洋側だ。この結果、小嶌氏の分析では、首都直下地震が発生した場合、最悪のケースで全国の精製能力の40%がストップすることになる。南海トラフが起きた時には、全体の34%がストップ。もし首都圏直下型と南海トラフの連動型が起こったら、あるいは首都圏から東海、南海までが幅広い地域で震度5強以上になるような大震災が起きたら、全国の71%の精製能力が瞬時に停止することになるとする。その場合、前述の通り、再稼働までには最低1週間がかかることが予想される。

これが、小嶌氏の描く最悪のシナリオだ。製油所の被災は、油槽機能まで損なうことを意味する。そのことが、さらなるガソリン不足の長期化の引き金となる。

加えて、がれきの除去など主要道路の啓開には1週間を要することが予想される。普通の車が通れるような状況になっても、タンクローリーのような大型車が動けるまでにはさらなる時間がかかる。つまり、ガソリンスタンドが仮に開いていたとしても1週間は供給が見込めない。そして、ほとんどのガソリンスタンドが非常用発電機をもっていないため、閉店が相次ぎ、開いているガソリンスタンドには長蛇の車の列ができる。 

こうした状況に対し、国は、真っ先に燃料を配送する「災害対策型中核SS」を整備しているが、全国の中核SSの数は1674しかない。中核SSでは、自治体の緊急車両や全国からかけつけてきた災害援助の車両に対して優先的に給油をすることになるため、一般の自動車への販売は原則としてあり得ないと小嶌氏は言う。仮に民間企業の車両が「緊急車両」の登録を受けたとしても、基本的には、中核SSに運ばれる燃料は、あくまで消防、警察、医療、啓開用のもので、「安易に給油できると考えるのは甘い」と小嶌氏は語気を強める。 

このような状況を鑑みれば、現実的な解決策は“車に乗らない”ということになる。どうしても必要なら、個人や企業は、平時から、最低1週間は、給油をしなくても、車両が動かせるように対策を講じておかなくてはならないというのが小嶌氏の主張だ。「震災後、各地で満タン運動が行われているが、最低7日分の燃料を残した形で給油しなくては意味がない」(小嶌氏)。