2018/07/05
『事業継続の問題・課題はPDCAでやっつけろ!』
■方針・手順・経営資源…見直し要件はどのBCPも同じ
次に「Plan」で割りだした6つの見直し項目について内外の関係者を集め、議論しながら内容を精査しました。これが「Do」のステップです。次の内容について見直しと確認を行いました。
まず「パンデミック発生時の対応手順」。感染拡大期における感染者および感染疑い者発生時の処置方法などを、オブザーバである産業医のアドバイスのもとで確認しました。
次に「事業活動の対応方針」。消毒液とマスクの必要数量の備蓄。不要不急業務のリスト。製品・サービス提供の縮小・中止の基準。出張旅行中止の基準を確認しました。
三番目は「従業員への教育」。これはパンデミック発生に備えた段階的な行動方針や衛生管理などが中心です。手洗い・消毒の徹底や接触を避ける工夫、重要業務に対応できる複数の代替人員研修の必要性などについても見直しました。
四番目は「コミュニケーション」についてです。パンデミック時の変則的な業務対応等について内外に、滞りなく伝達する方法と手段を持たなければなりません。
五番目。「顧客や取引先への対応」です。パンデミック発生期間中は、当社の製品やサービスへのニーズが激増あるいは激減する顧客が想定されることが分かりました。これら外部への対応方針(優先順位・遅延・中止等)の取り決め内容を確認します。
最後は「ITの活用」です。テレビ会議やスカイプによる人的接触を避ける会議方法に、いつでもシフトできるかどうかが問われます。また、一般事務や営業関係の書類作成や見積もり作成・報告を自宅から行う、いわゆるテレワーキングの方法についても追加的に検討しました。
■業種によってはさらなる見直しが必要
Sさんの会社では、ひとまず最低限以上の6項目の見直しと確認を行い、BCPに必要な変更を加えて改訂版として配布することになりました。さて、次のステップである「Check」ではどのような評価を行えばよいのでしょうか。見直し作業やBCPの改訂・配布を終えたというだけでは、「Check」とみなすことはできません。かと言って実際にパンデミックが起こるのを待つというのもヘンです。
しかし、この6項目のひとつひとつをテーマにした訓練や演習を行えば、ある程度の効果の確かさや有効性は把握できるはずです。感染者発生時の救急対応については実地訓練方式で、事業継続問題としての変則的な業務態勢へのシフトなどについては、机上演習でカバー可能でしょう。
なお、パンデミック対応についての検討や確認事項は、ここで述べたことがすべてではありません。海外進出している企業の場合は、現地社員とその家族の対応方法、出国・帰国時の手順などを追加することもあるでしょう。また、パンデミックがピークを迎えた時には食料品等が劇的に品薄・品不足に陥る可能性がありますから、地震対応BCPと同じように非常時の食料品や水の備蓄が役立つことも考えられます。
また、Sさんの会社の例では業種を明示していませんが、これが小売業や製造業、運輸業といった具体的な会社のこととなると、さらなる見直し項目が必要なことは言うまでもありません。例えば、製造業の場合、原料料や部品などが品不足や欠品になる可能性があります。理由は原材料・部品の仕入先や運輸業者に多数の感染者が発生して調達不能に陥るためです。このような時の代替調達の方法についても、オーソドックスな地震対応のBCPがヒントになるかもしれません。
(了)
『事業継続の問題・課題はPDCAでやっつけろ!』の他の記事
- 第19回(最終回):経営方針が変わってBCMが消滅寸前!?(適用事例13)
- 第18回:災害協定をリップサービスで終わらせないためには?(適用事例12)
- 第17回:雲をつかむようなBCPの見直しよ、さらば!(適用事例11)
- 第16回:つぶやきは災いのもと!(適用事例10)
- 第15回:その対策、予算の都合で見合わせとします!(適用事例9)
おすすめ記事
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/09/15
-
-
-
-
防災は面白くないと広がらない
地震が起きたとき、スマートフォンに通知された情報を頼りに避難を判断することが多いだろう。緊急地震速報の情報から、いまどのように動くべきかを判断できる、そんな身近な危機管理を習慣づけた1 社が、アールシーソリューション(東京都新宿区)だ。2010 年に提供開始したスマートフォンアプリ「ゆれくるコール」は、緊急地震速報を受信できるアプリとして多くのユーザーが利用している。代表取締役の栗山章さんは、数多くのユーザーに防災の重要性を広めてきた一方で、ビジネスとして成り立たせる難しさにも直面してきたという。これまでのサービス開発の経緯や、防災ビジネスへの価値観を聞いた。
2026/09/09
-
被災施設への再入場判断「戻ってはいけない」では解決しない避難後の問題
大地震が発生し、安全な場所へ避難して一息つくと、人々には「ひとまず危険のピークは過ぎた」という根拠なき安心感が芽生える。そして、さまざまな理由で「避難してきた場所に戻りたい」といった気持ちが生じる。しかし、被害がどの程度なら戻ってよいのかについての明確なルールや事例は、どこを探してもあまり見当たらない。 国には応急危険度判定という仕組みや、施設管理者が建物を緊急点検するための指針などもある。が、これらは避難直後の「戻りたいニーズ」に応える仕組みではない。ここに、避難直後の「再入場」という古くて新しい問題がある
2026/09/09
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2026/09/07
-
-
-
暗黙知を形式知へ、10年の徹底改善が生きた
熊本市の工務店・新産住拓株式会社(小山英文社長)は、2016年の熊本地震や近年相次ぐ豪雨災害を通じて災害対応を磨き上げてきた。発生当日は、約3割の社員が定休日で社長も不在という条件下にもかかわらず、地震発生から50分で社員の安否確認をおおむね完了し、2時間後にはホームページや顧客専用サイトで被害受付を開始した。
2026/08/24





※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方