■思わず本音が見えた事業継続管理の盲点
Sさんは社内の危機管理全般を担当しています。災害や事故などが起これば、現場の責任者と共同でインシデント調査を行い、報告書を書き、再発防止策の策定に関わります。しかし担当はSさん一人だし、Sさんの所属部署はいつも多忙な総務なので、同僚に業務を手伝ってもらうのは至難の技です。
先日も、書類の山に埋もれて仕事をしていると、上司から背中をポンとたたかれました。「よっ、例の見直しの段取り、進んでる?」
「は? 何のことですか」とSさんが疲れた目で返答すると、上司はあからさまに不機嫌な顔でくどくどと説明を始めました。
「パンデミックBCPの見直しのことだよ。新型インフルエンザはいつ感染爆発を起こすかわかったものではない。2009年のパンデミック騒動の時は幸い大事には至らなかったが、それでも過剰反応を起こした顧客や取引先から風評被害を起こされかねない状況だった。しかしその後、2011年に東日本大震災が起こってからは、すっかりパンデミックのことは忘れ去られてしまったようだ。だから、今後に備えて必要最小限の対策が維持できているかどうか、見直しをしてほしいということなんだ」。
「これはうっかりしておりました。この書類を片づけたらすぐに見直しを行います!」とSさんは力強く返事をしました。とここまではよかったのですが、心中には本音がくすぶっています。
「新型インフルなんて、消毒液とマスクの備蓄があればそれでOKじゃないか。もうこれらは確認済みだ。見直すって何をやれというのだろう…?」。
■パンデミックの見直し項目は6つ
「しかし…」とSさんは考え直します。「そう言えば"見直し"なんて、地震や台風災害のBCPについても何も手をつけてないなあ。これを機に心を入れ替えて、パンデミックBCPをモデルケースとして見直しの仕組みをきちんと作っておこう」。
そして、いわば継続性ツールの代名詞でもあるPDCAを活用し、末永く使える見直しのためのステップを組み立てようと考えたのです。彼はPDCAの「Plan」における目標を「パンデミックBCPの見直し手順を確立する」としました。
さて、どんなことをやればこの目標が達成できるのでしょうか。これが今回のキモです。Sさんは棚の奥から過去の遺物のようなパンデミックBCPのバインダーを取り出し、ページをめくりながら、2009年当時の状況―業務への影響だけでなく顧客や取引先の動きなども含む―を思い起こしてみました。そしてノートにメモした次の6つの項目に見直しの手がかりがありそうだと結論づけました。
・パンデミック発生時の対応手順
・事業活動の対応方針
・従業員の教育
・コミュニケーション
・顧客・取引先対応
・ITの活用
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