【ワシントン時事】米政府は7日、ロシアの侵攻を受けるウクライナにクラスター弾を供与すると発表した。ウクライナのゼレンスキー大統領は「民主主義が独裁政権に勝利するための決定的な一歩だ」と歓迎しており、難航する反転攻勢てこ入れの切り札としたい考えだ。
 ロシアの侵攻開始から8日で500日目。ウクライナの将来を決める重要な北大西洋条約機構(NATO)首脳会議を控え、米国を盟主とするNATO陣営は支援継続を鮮明にした。
 クラスター弾は多数の子弾を広範囲にまき散らす殺傷力の高い爆弾。しかし、不発弾が多く、戦後も民間人を爆発に巻き込む可能性が高いため、非人道的との批判が強い。米政府も過去にロシアによるクラスター弾使用を非難してきた経緯がある。
 バイデン米大統領はCNNテレビのインタビューで「難しい決断だった。同盟国や議会の友人とも話し合った」と認めた上で、「ウクライナは弾薬を使い果たしつつある。彼らは(クラスター弾を)必要としていた」と強調した。
 米国などがウクライナに供与している155ミリ口径の砲弾などは、生産ペースが消費に追い付かず、最前線の部隊への供給が細る可能性が出ている。新たに供与されるクラスター弾は、塹壕(ざんごう)などロシア軍の防衛線をたたくのに使われる見通しだ。
 サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は記者会見で「砲弾がこの紛争の核心だ」と指摘。米国や欧州で砲弾の増産を急ぐ一方で、クラスター弾などの兵器を供与することで「ウクライナを無防備な状態にはしない」と表明した。
 一方、ゼレンスキー氏はNATO首脳会議を前に東欧諸国やトルコを相次いで訪問した。スロバキアでは弾薬の共同生産などの防衛協力拡大で一致。トルコのエルドアン大統領との会談でも、NATO加盟支持を取り付けた。 
〔写真説明〕回収されたクラスター弾の不発弾=2020年10月、アゼルバイジャンとアルメニアの係争地ナゴルノカラバフの中心都市ステパナケルト(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)