2011/01/25
誌面情報 vol23
企業の挑戦
海外拠点と連携したBCMS(事業継続マネジメントシステム)
AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社(本社:東京)
半導体・液晶ディスプレイ製造用フォトレジストなどの電子材料を製造するAZエレクトロニックマテリアルズ株式会社(本社:東京都文京区)は、事業継続マネジメントシステム(BCMS)の国際規格であるBS25999-2:2007の認証をSGSジャパン株式会社から2010年11月5日付で取得した。同社は、海外拠点での代替生産など、グローバルなバックアップ体制によるBCP(事業継続計画)の構築に力を入れてきた。同社の主力製造・開発拠点(メインサイト)静岡テクノロジーセンターBCMS管理責任者の若松裕己氏は「今後、世界各地のサイト(拠点)にも指導していきたい」としている。

■グループ拠点やサプライヤーとも連携
AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社は、液晶テレビや携帯電話などのフラットパネルディスプレイや半導体の製造プロセスで使用される電子材料の製造メーカー。特にフラットパネルディスプレイ市場におけるフォトレジスト分野では世界トップシェアのサプライヤーとして知られる。
同社はアジア、ヨーロッパ、北米など世界10カ国にグループ拠点を持ち、海外拠点におけるグローバルな事業継続体制の確立に早くから取り組んできた。2005年には、大手グローバル再保険会社のリスクコンサルティング部門の指導の下、海外拠点との連携による代替生産などバックアップ体制の構築に向けた演習を実施。以来、重要業務の洗い出しや、
火災や爆発を想定した演習を毎年行ってきた。
2010年4月には、BS25999-2取得に向けた取り組みを開始し、半年後の11月には、フラットパネルディスプレイ製造用フォトレジストなど、同社の基幹事業である製造部門でBS25999の認証を海外のグループ拠点に先駆けて取得した。
認証取得の経緯について若松氏は「自社だけでなく海外のグループ拠点やサプライヤーと連携して事業継続性を高めるためには、自社独自のBCPとは別に、体系化されたフレームワークやベストプラクティスを知ることが必要だと思いました」と振り返る。BS25999-2を取得したことで各担当の役割が明確化し、日常的にBCMS要員が全員そろわなくても、その場にいるメンバーだけでIMPやBCPを発動できる体制になったという。
■品目リストをABC分析
同社の事業継続体制の特長の1つが、仕入れや出荷製品のABC分析だ。重要度別に同社の品目リストを、
A=供給を絶対に止めてはいけないもの、
B=可能な限り継続するもの、
C=いざとなったら止めるもの、
の3つに分類し、それぞれのカテゴリー別に対策を検討。Aカテゴリーの品目については、事故や災害に備えて普段から1つの製品を2カ国で製造したり、他国でも同じ製造方法で製品が作れるよう製造装置を配置しバックアップ体制を構築する。例えば、日本で事故や災害により事業が中断した場合、台湾や韓国、アメリカの3国がそれぞれ日本で作られて
いる主要製品を分散して製造できる体制が整えられているという。
また、同社では外部に製造委託している製品や原料の供給不安のリスク対策に重点を置き、2008年から重要なサプライヤーに対してBCMの成熟度を調査するなどのアセスメントを実施している。例えば、原料のサプライヤーに対して脆弱性評価をし、防災対策、事業継続対策、安全在庫確保、分散保管などが行われているか、現状把握と改善推進を行う。
■BCP訓練
海外サイトと同時進行
同社では、定期的に2、3カ月に1度、製造部門だけでなく営業部門や調達部門などから選ばれたBCM実行委員でミーティングを行っているほか、年1回のBCP訓練と被災状況を迅速かつ的確に把握・対応することを目的としたIMP(初動対応)訓練を年2回行っている。
2010年9月7日から10日にかけて実施したBCP訓練では、世界各地の拠点を対象として順番に、インシデント(被災)サイトとバックアップサイトを指定し、海を隔てた事業継続体制の実効性を確認した。9月8日には日本がインシデントサイト
に指定され、台湾、韓国、アメリカの3カ国がバックアップ体制となって訓練が行われた。4カ国同時に演習が進行するため時差を考慮し、各サイトとは電話会議で随時、連絡を取り合ったという。
訓練のシナリオは、先の再保険会社が作成。インシデントサイトに指定された同社では、短期間で被害状況を把握し、生産計画や在庫などを考慮して顧客への製品供給継続可能時間を算出。目標復旧時間以内に自力復旧できないと判断される製品に関しては、バックアップサイトに依頼した。
■海外メディア対応訓練も
この訓練では、海外メディアへの広報対応についても確認した。若松氏は「海外にも製品を販売していますので、日本で事故が起きたからといって日本のメディアリリースをそのまま直訳しても、アメリカの人は納得してくれないでしょう。その国
にあわせたものを用意しなければなりません」と説明する。
IMP訓練は、直近では2010年の7月と12月に実施している。7月の訓練では消防署の協力により、避難訓練や消火訓練、救出訓練を行った。12月は集合と点呼。また、自社の防災用品や非常食を体育館に展示し、従業員に内容を把握してもらったほか、静岡県西部危機管理局から防災担当者を招き、専門家からのアドバイスを受けたという。
■実際にBCPを発動
近年では、実際にBCPを発動するケースが増えているようだ。2010年には、落雷による事故でサプライヤーが被災。電気がストップし、製造装置が暴走したことで一時的に同社への原料の供給が止まり、BCPを発動した。アイスランドで起きた噴火では、空輸便がストップしたことで使用原料の供給が止まり、やはりBCPを発動し、事業を継続させたという。
若松氏は、BCMSの運用は「各部門の役割の認識と部門間の連携が最も大切」と強調する。同社のBCPの文書は「一般的なものに比べて量が少ない」(若松氏)。多くの事象を想定していくつものBCPをつくるのではなく、訓練や実際のBCPの発動により、BCMの担当者が、事業継続のために必要な各役割を認識できているからだという。若松氏は、
「BS25999-2 を取得したことを生かし、今後は、世界各地のサイトに演習などを通し指導することでグローバルなBCMSを強化していきたい」と話している。

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