第28回 AIに関する適用除外条項を保険会社が導入しつつある
このリスクからどのようにあなたの組織を守るか
鈴木 英夫
慶應義塾大学経済学部卒業。民族系石油会社で、法務部門・ロンドン支店長代行・本社財務課長など(東京・ロンドン)。外資系製薬会社で広報室長・内部監査室長などを務め、危機管理広報・リスクマネジメントを担当(大阪)。現在は、GRC研究所代表・研究主幹、リスクマネジメント&コンプライアンス・コンサルタント(兵庫)。日本経営管理学会会員、危機管理システム研究学会会員。
2026/09/10
新 世界のリスクマネジメントの潮流
鈴木 英夫
慶應義塾大学経済学部卒業。民族系石油会社で、法務部門・ロンドン支店長代行・本社財務課長など(東京・ロンドン)。外資系製薬会社で広報室長・内部監査室長などを務め、危機管理広報・リスクマネジメントを担当(大阪)。現在は、GRC研究所代表・研究主幹、リスクマネジメント&コンプライアンス・コンサルタント(兵庫)。日本経営管理学会会員、危機管理システム研究学会会員。
企業におけるAI導入は拡大しているが、同時に保険市場では静かな危機が進行している。AI関連の訴訟はここ数年で増加しているにもかかわらず、保険会社は補償範囲を拡大するどころか、むしろAI関連保険から撤退しようとしているのだ。サイバー保険、専門職業賠償責任保険(E&O)*)、一般賠償責任保険の更新時に、保険会社はAIに関する包括的な適用除外条項を急速に導入しつつある。
*)訳者注:E&O保険(Errors and Omissions Insurance)とは、事業者や専門職が業務上の過失、誤り、書き漏らし、助言の不備などによって顧客に経済的損害を与えた際に追う賠償責任を補償する専門職賠償責任保険(Professional Liability Insurance)の一種。日本でも付保できる。
多くのリスクマネージャーは、データや専門サービスに関連する損失であれば、標準的なサイバーおよびテクノロジー関連の専門賠償責任保険(E&O保険)で補償されるという前提で業務を行っている。歴史的に見ると、それは事実であった。従来の保険契約は人工知能(AI)についてほとんど言及しておらず、補償範囲が不明確で、請求後に法務部門と引受部門の間で争いが生じることも少なかった。しかし、こうした認識は変化しつつある。
予測不可能なアルゴリズムリスクに直面し、商業保険の引受担当者は、受動的な沈黙から積極的な除外へと方針転換している。近年の更新サイクルにおいて、保険会社は「自律的意思決定システム」「生成出力」「アルゴリズム処理」に起因する請求について、包括的かつ絶対的な除外条項を静かに導入しつつあるのだ。
保険市場の論理は単純だ。従来の保険料は、大規模言語モデルがもたらす体系的な集約リスクを考慮して設定されていなかった。保険会社は、これらのリスクを標準的な財産保険*)、賠償責任保険、サイバー保険から完全に切り離すことで、日々の企業活動と実際のバランスシート保護との間に大きなギャップを生み出している。
*)訳者注:「標準的な財産保険」とは、法人の事業用建物・設備・什器や、個人の住宅・家財などの実体ある財産(有形固定資産)が、火災や風水害などの事故によって生じた「物理的な損害(対物損害)」を補償する一般的な損害保険全般を指す。
新 世界のリスクマネジメントの潮流の他の記事
おすすめ記事
防災は面白くないと広がらない
地震が起きたとき、スマートフォンに通知された情報を頼りに避難を判断することが多いだろう。緊急地震速報の情報から、いまどのように動くべきかを判断できる、そんな身近な危機管理を習慣づけた1 社が、アールシーソリューション(東京都新宿区)だ。2010 年に提供開始したスマートフォンアプリ「ゆれくるコール」は、緊急地震速報を受信できるアプリとして多くのユーザーが利用している。代表取締役の栗山章さんは、数多くのユーザーに防災の重要性を広めてきた一方で、ビジネスとして成り立たせる難しさにも直面してきたという。これまでのサービス開発の経緯や、防災ビジネスへの価値観を聞いた。
2026/09/09
被災施設への再入場判断「戻ってはいけない」では解決しない避難後の問題
大地震が発生し、安全な場所へ避難して一息つくと、人々には「ひとまず危険のピークは過ぎた」という根拠なき安心感が芽生える。そして、さまざまな理由で「避難してきた場所に戻りたい」といった気持ちが生じる。しかし、被害がどの程度なら戻ってよいのかについての明確なルールや事例は、どこを探してもあまり見当たらない。 国には応急危険度判定という仕組みや、施設管理者が建物を緊急点検するための指針などもある。が、これらは避難直後の「戻りたいニーズ」に応える仕組みではない。ここに、避難直後の「再入場」という古くて新しい問題がある
2026/09/09
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/09/08
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2026/09/07
暗黙知を形式知へ、10年の徹底改善が生きた
熊本市の工務店・新産住拓株式会社(小山英文社長)は、2016年の熊本地震や近年相次ぐ豪雨災害を通じて災害対応を磨き上げてきた。発生当日は、約3割の社員が定休日で社長も不在という条件下にもかかわらず、地震発生から50分で社員の安否確認をおおむね完了し、2時間後にはホームページや顧客専用サイトで被害受付を開始した。
2026/08/24
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方