(イオンモール熊本の爆発跡)

大地震が発生し、安全な場所へ避難して一息つくと、人々には「ひとまず危険のピークは過ぎた」という根拠なき安心感が芽生える。そして、さまざまな理由で「避難してきた場所に戻りたい」といった気持ちが生じる。しかし、被害がどの程度なら戻ってよいのかについての明確なルールや事例は、どこを探してもあまり見当たらない。

国には応急危険度判定という仕組みや、施設管理者が建物を緊急点検するための指針などもある。が、これらは余震等による建物の倒壊や部材落下などの二次災害の防止を目的に、被災した建築物の危険性を応急的に判定するものだ。避難直後の「戻りたいニーズ」に応える仕組みではない。ここに、避難直後の「再入場」という古くて新しい問題がある。

再入場を巡る現場運営の難しさ

イオンモールのケースを振り返る。当時施設には約3000人の利用客と1300~1500人の従業員がいた。日ごろの初動対応訓練が功を奏し、総勢4500人余りを安全に避難させることには成功した。この後のBCP的な流れとしては、安全を確認し、被災状況の調査・分析を経て復旧のフェーズに移るのだが、「避難直後」と「安全確認」の隙間には、大型商業施設特有の「再入場の是非」を巡る次のような問題が生じやすい。読売新聞オンラインなどの報道をまとめると以下のように集約できる。

・貴重品などの回収を求める個別の事情に対応せざるをえない
・多数の出入口があり、限られた要員で全出入口を完全封鎖・監視することは難しい
・避難後の客の行動や再立ち入りをリアルタイムで網羅的に把握・統制するのは困難


これらは、多数の避難者が集まっている中、避難者の動向を把握し、勝手に再入館しようとする人を制止しながら、暑さや体調不良、トイレ、忘れ物など、現場で発生するさまざまなニーズにどう対応するかという問題だ。

イオンの事例でも、避難時には「外へ出てください」との案内があった一方、その後に「外は暑いので館内に戻った」「屋上駐車場や施設内に戻った」時でも、何も言われなかったという人が複数いた。安全確認には相応の時間がかかるが、この間に避難した人々の行動を統制することはなかなか困難なのである。