能登半島地震で被害を受けた企業は、5日も被災状況の把握と復旧作業を進めた。経済産業省によると、北陸に主要な生産拠点を持つ企業など200社弱のうち、8割超で生産再開のめどが立った。ただ、震源付近の工場では、従業員の安否確認が済んでいないメーカーがある。停電や物流の混乱も続いており、部品供給を含めて被害の全体像はなお見えない状況だ。
 東芝は地震発生直後に生産を止めた石川県能美市の半導体子会社について、一部工程の稼働を10日に再開できる見通しが立ったと発表した。破損した配管の修復と製造装置の点検作業を急いでおり、島田太郎社長は5日、「顧客に早く安心してもらえるよう全力を尽くす」と話した。
 日本製鉄は、地震発生で停止した新潟県上越市の製鉄所を2日夜から順次再開。三菱ケミカルグループの富山事業所(富山市)も8日以降、安全確認できたプラントから順次再開するという。
 一方、村田製作所では、震源に近い石川県穴水町の工場などで依然、全従業員の安否が確認できていない。後発医薬品大手のサワイグループホールディングスは、福井県あわら市の3工場で建物の一部に被害が出た。本来は年始休暇明けの4日に稼働を再開する予定だったが、早くても9日以降になるという。
 供給網の混乱も懸念される。トヨタ自動車は8日に生産を始める予定だが、佐藤恒治社長は「被災地に稼働の見通しが立たない仕入れ先がある」と説明。取引先と連携して調査を進め、6日以降に自社工場の稼働への影響を見極める考えだ。
 北陸電力によると、石川県では5日夜時点で約2万3600戸が停電中。経産省によると、石川県の能登半島北部6市町では5日朝の時点でガソリンスタンド69カ所中23カ所しか営業を再開できていない。出光興産の木藤俊一社長は「最大の課題は道路だ。小さなトラックとかポリ缶とか、さまざまな方法で届けている」と強調した。
 コンビニエンスストアでは、ローソンが6日午後から被害の大きい同県七尾市で移動販売を実施する予定。物流の混乱が続く地域でも、営業再開の方策を探る。
 帝国データバンクによると、能登地方に本社を置く企業は4075社で、従業員は合計4万9728人。地域経済への影響が懸念される。 

(ニュース提供元:時事通信社)