環境省は、クマによる今年度の人身被害が過去最悪となっていることを受け、冬眠が明ける春に向け、人の生活圏への出没防止対策を講じる。3月末までに生息状況を調べ、駆除に向けた準備や出没時の連絡体制を強化。冬眠明けに急増する被害を抑える。同省は今年度の補正予算で事業費7300万円を確保した。
 環境省は、県や捕獲事業者に委託して出没対策を実施。1県当たり300万~500万円を振り向ける。既に被害に悩む20道府県から要望を受けており、今月中に実施地域を詰める。
 具体的には、ハンターからの聞き取りやドローンを使い、足跡やふんなどを基にクマの生息状況を調査。その上で、地域特性に応じた駆除方法や、果樹の伐採などを盛り込んだ出没防止計画を策定してもらう。出没に備え、自治体や警察、狩猟団体などの連絡体制を構築するほか、研修会や訓練も開く。
 今年度、クマによるけがや死亡などの人身被害は昨年12月末時点で217人に上り、統計を始めた06年度以降で最悪を更新している。クマは餌を求め人の生活圏に出没する傾向があり、今年度は東北地方を中心にドングリが不作だったため、秋田県で70人、岩手県で49人と被害が多発している。
 環境省は冬眠前のクマ被害に対しては、自治体に専門家を派遣して原因の分析や講習を行う事業を昨年11月から行っている。一方、クマは12月ごろから翌年3~5月まで冬眠し、目覚める春に人身被害が多発する傾向があるため、今回の対策を通じて新たな被害を抑える。 

(ニュース提供元:時事通信社)