2024/07/17
インタビュー
基本解説 Q&A 線状降水帯とは何か?
6月21日、気象庁が今年初の線状降水帯の発生を発表した。短時間で大量の激しい雨を降らせる線状降水帯は、土砂災害発生を経て、被害を甚大化させる。気象庁では今シーズンから、半日前の発生予測のエリアを細分化し、対応を促す。線状降水帯研究の第一人者である気象庁気象研究所の加藤輝之氏に、研究の最前線を聞いた。
線状降水帯が発生する条件
ーー気象庁は7月~9月の3カ月予報で、 全国的に気温は高く、西日本を中心に湿った空気の影響を受けやすい時期がある見込みと発表しました。線状降水帯の発生はどうなりそうですか?
線状降水帯が発生するには条件があります。大気下層に大量の水蒸気が流入し、より暖かく湿った空気が下層に入ってくると積乱雲が発達しやすくなり、大雨が降りやすくなります。さらに中層も湿った状態で、そこに上空の風向きが変化することで、複数の発達した積乱雲の連なりが発生します。
その条件がそろった状態を天気図で見ると[図1]のような気圧配置になります。太平洋高気圧が西に張り出し、前線が存在するようになると、冬の日本海のように気圧線が密集した状態になります。それによって強い南西風が吹き込むことで、線状降水帯が発生しやすくなります。この状況が数日継続することで西日本、特に九州で大雨を降らせます[図2]。こういった気圧配置が頻発するようなら、線状降水帯の頻発も予想されます。
ーー線状降水帯の発生は増加しているのでしょうか?
そこはまさに、研究に取り組んでいる最中です。3時間の積算雨量が130㎜を超える集中豪雨に関して言えば、1976年から2022年まで47年間の観測データから発生数を調査したところ、全国で2倍に増えていました。特に九州は多く、2.6倍でした。6~7月の梅雨時期に限定すると全国で3.4倍、九州では3.5倍と相当な増加を見せています。
集中豪雨イコール線状降水帯ではありませんが、台風や熱帯低気圧周辺を除くと、集中豪雨のおよそ3分の2は線状降水帯によって発生しています。特に梅雨期の九州で発生する集中豪雨は、ほとんどが線状降水帯によるものです。
梅雨時は朝方に多く発生 避難を考慮し半日前に発生予測
ーー集中豪雨の発生は時間帯によっても違うのでしょうか?
梅雨時期の集中豪雨は、朝7~9時の時間帯で極端に多く発生しています。特に九州では、他の時間帯と比較して、その割合は 3.4倍にまで達します。明け方を含めた4~9時になると、その増加は 7.5 倍にまで至ります。ただし、だからといって昼間や夜間が安全と解釈するのは誤りなので、その点は注意してください。
なぜ気象庁が線状降水帯の発生予測を半日前から発表するかといえば、昼間なら2、3時間前の発表で避難できますが、朝の発生の場合は夜に予測を出しても就寝しているために避難が不可能だからです。夜間の避難を考慮して、線状降水帯の発生予測は半日前からになっています。
線状降水帯が発生した集中豪雨と発生のない集中豪雨を比較すると、死者が5倍ほど増えたデータがあります。なぜなら、線状降水帯による集中豪雨は土砂災害を引き起こしやすく、危険性が極めて高いからです。集中豪雨には昼夜を問わず警戒が必要です。
ーー線状降水帯の発生は、日本特有の現象なのでしょうか?
線状に雨を降らせる現象は世界中にあります。しかし、日本のように発達した積乱雲が停滞し、年間に何度も豪雨をもたらす現象は他では見つかっていません。今後、日本周辺特有だったものが、温暖化による海面水温の上昇により、世界のあちこちで発生する可能性はありますが、現段階では日本でしか見られません。
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