東京本社機能移転の現実解を考える
第29回:巨大地震のBCP対策
林田 朋之
北海道大学大学院修了後、富士通を経て、米シスコシステムズ入社。独立コンサルタントとして企業の IT、情報セキュリティー、危機管理、自然災害、新型インフルエンザ等の BCPコンサルティング業務に携わる。現在はプリンシプル BCP 研究所所長として企業のコンサルティング業務や講演活動を展開。著書に「マルチメディアATMの展望」(日経BP社)など。
2024/07/17
企業を変えるBCP
林田 朋之
北海道大学大学院修了後、富士通を経て、米シスコシステムズ入社。独立コンサルタントとして企業の IT、情報セキュリティー、危機管理、自然災害、新型インフルエンザ等の BCPコンサルティング業務に携わる。現在はプリンシプル BCP 研究所所長として企業のコンサルティング業務や講演活動を展開。著書に「マルチメディアATMの展望」(日経BP社)など。
いまだ能登半島では大きな余震が続き、他のエリアでも震度5弱以上の地震が連続して発生している印象があるなか、やはり次の巨大地震への備えとして、都心南部直下地震、つまり首都直下地震について、再度シナリオから見直す必要があると考えています。
ご存じのように、東京都は2022年、東京に影響を与える地震群に対して被害想定の見直しを行い、2023年には地域防災計画を修正しました。都としての通信基盤の確保(Wi-Fi設置促進や衛星通信の活用検討など)や帰宅困難者対策の強化などが盛り込まれましたが、それらが進展しても、東京に本社機能を有する企業・組織のBCP構築シナリオにほぼ影響を与えないのではないかと思っています。
現在、東京に本社機能を有する企業や組織のBCPにおいて最も重要なのは(1)停電対策(2)情報システムの継続(IT-BCP)(3)有事コミュニケーション継続のためのシステム導入(4)耐震・免震が強化されたオフィスビルの移転、の4項目。それぞれの具体策を次にまとめます。
さて、これらの具体策を実現でき、首都直下地震に耐えることができるのは、すでに多くを実現している一部のインフラ企業や大組織だけであり、そうでない企業が今後ここに莫大な予算を振り向けて理想的なBCP機能を実現することは、難しい経営判断となるのではないでしょうか。
首都直下地震後には、復旧半ばに、南海トラフ地震がやってくる可能性もあります。南海トラフ地震で東京に大きな揺れをもたらすとされる東海地震(静岡県沖)では、揺れの想定は震度5弱。東日本大震災と同程度ですが、液状化被害が想定されます。また、東京から離れた南海地震(高知沖)や日向灘地震においても、都内に長周期地震動が及ぶ可能性があります。
液状化被害は地盤増幅率によりある程度見えていますが、長周期地震動によるオフィスビルへの被害程度はまったく予想できません。都内湾岸エリアや武蔵野台地の南方、東方エリアの超高層ビル、超高層マンションなどが長周期地震動に見舞われた場合に何が起こるのか、誰も想定できないなか、BCP的に求められるのは、免震・耐震だけでなく、長周期地震動対策ビルでもある必要があります。都内において長周期地震動対策が施されたオフィスビルは、数えるほどしかありません。
企業を変えるBCPの他の記事
おすすめ記事
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/09/15
防災は面白くないと広がらない
地震が起きたとき、スマートフォンに通知された情報を頼りに避難を判断することが多いだろう。緊急地震速報の情報から、いまどのように動くべきかを判断できる、そんな身近な危機管理を習慣づけた1 社が、アールシーソリューション(東京都新宿区)だ。2010 年に提供開始したスマートフォンアプリ「ゆれくるコール」は、緊急地震速報を受信できるアプリとして多くのユーザーが利用している。代表取締役の栗山章さんは、数多くのユーザーに防災の重要性を広めてきた一方で、ビジネスとして成り立たせる難しさにも直面してきたという。これまでのサービス開発の経緯や、防災ビジネスへの価値観を聞いた。
2026/09/09
被災施設への再入場判断「戻ってはいけない」では解決しない避難後の問題
大地震が発生し、安全な場所へ避難して一息つくと、人々には「ひとまず危険のピークは過ぎた」という根拠なき安心感が芽生える。そして、さまざまな理由で「避難してきた場所に戻りたい」といった気持ちが生じる。しかし、被害がどの程度なら戻ってよいのかについての明確なルールや事例は、どこを探してもあまり見当たらない。 国には応急危険度判定という仕組みや、施設管理者が建物を緊急点検するための指針などもある。が、これらは避難直後の「戻りたいニーズ」に応える仕組みではない。ここに、避難直後の「再入場」という古くて新しい問題がある
2026/09/09
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2026/09/07
暗黙知を形式知へ、10年の徹底改善が生きた
熊本市の工務店・新産住拓株式会社(小山英文社長)は、2016年の熊本地震や近年相次ぐ豪雨災害を通じて災害対応を磨き上げてきた。発生当日は、約3割の社員が定休日で社長も不在という条件下にもかかわらず、地震発生から50分で社員の安否確認をおおむね完了し、2時間後にはホームページや顧客専用サイトで被害受付を開始した。
2026/08/24
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方