法律と契約
契約自由の原則

山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
2024/07/25
弁護士による法制度解説
山村 弘一
弁護士・公認不正検査士/東京弘和法律事務所。一般企業法務、債権回収、労働法務、スポーツ法務等を取り扱っている。また、内部公益通報の外部窓口も担っている。
法律相談の場において、ご相談者から、相談事項に関して、「法律ではどのようになっていますか」と質問されることがあります。もちろん、相談事項について、法律によってどのような内容が定められているのかということが、とても重要であることに疑いはありません。
しかしながら、とりわけ、契約関係のトラブルに関しては、契約書や約款などを読み、契約当事者間の合意がどのようなものになっているのかを確認することが、まずもって重要になってきます。今回は、法律と契約との関係について、ご説明してみたいと思います。
近代の市民社会においては、個人は、自らの意思に基づいて、自らの権利義務関係・法律関係を形成することができるという、私的自治(意思自治)の原則があると考えられています。
この私的自治(意思自治)の原則は、契約の局面においては、契約当事者の自由な意思によって契約関係が決定されるという、契約自由の原則として立ち現れてきます。この契約自由の原則は、下表のとおりの内容を含むものです。
この契約自由の原則には、自由で対等な当事者という前提がありますが、現実の社会としては、例えば、事業者と消費者、使用者と労働者というように、当事者間に力関係の非対称性が存在します。そういった非対称性を是正するなどのために、契約自由の原則の修正が図られ、例外が設けられています。
締結の自由との関係では、水道法15条1項は、「水道事業者は、事業計画に定める給水区域内の需要者から給水契約の申込みを受けたときは、正当の理由がなければ、これを拒んではならない」として、水道事業者に対して、原則として、給水契約の申込みに対する承諾の義務、つまり、契約締結の義務を課しています。
相手方選択の自由との関係では、いわゆる男女雇用機会均等法5条は、「事業主は、労働者の募集及び採用について、その性別にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」としており、これは、相手方選択の自由の間接的な制約といえます。
内容の自由との関係では、民法90条は、「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする」としており、公序良俗に反する内容を定める契約は、無効ということになります。例えば、犯罪行為を委託する契約や、暴利による金銭消費貸借契約などは、公序良俗に反し無効であるといえます。
方式の自由との関係では、民法446条2項は、「保証契約は、書面でしなければ、その効力を生じない」としています。テレビ番組などで、よく、「契約書がなくても、(原則として)契約は成立する・有効だ」といった趣旨の解説がなされることがあるかと思いますが、当事者間の合意のみで契約が成立する(≒書面は必要でない)ということの例外が、保証契約では定められているといえます。
弁護士による法制度解説の他の記事
おすすめ記事
永野芽郁と田中圭の報道から考える広告リスクタレントの不倫疑惑
「不倫報道で契約解除」は企業の広告・広報担当者にとって決して珍しい判断ではなくなりました。特に「B to C」企業は世間の空気に過敏にならざるを得ない構造があります。永野芽郁さんと田中圭さんという人気俳優による不倫報道が世間をにぎわせています。企業にとって本質的に問われるべきは、タレントの私生活そのものではなく「報道によって自社ブランドが受けるリスクをどう評価し、どう備えていたか」という事前準備と、報道後のブレない対応です。本稿では、広告タレント起用のリスクに対して、企業が準備しておくべきこと、そして“報道された時”にどう判断すべきかを整理します。
2025/05/20
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/05/13
「まさかうちが狙われるとは」経営者の本音に向き合う
「困った人を助け、困った人を生み出さず、世界中のデータトラブルを解決します」。そんな理念のもと、あらゆるデータトラブルに対応するソリューションカンパニー。産業界のデータセキュリティーの現状をどう見ているのか、どうレベルを高めようとしているのかを聞きました。
2025/05/13
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/05/05
企業理念やビジョンと一致させ、意欲を高める人を成長させる教育「70:20:10の法則」
新入社員研修をはじめ、企業内で実施されている教育や研修は全社員向けや担当者向けなど多岐にわたる。企業内の人材育成の支援や階層別研修などを行う三菱UFJリサーチ&コンサルティングの有馬祥子氏が指摘するのは企業理念やビジョンと一致させる重要性だ。マネジメント能力の獲得や具体的なスキル習得、新たな社会ニーズ変化への適応がメインの社内教育で、その必要性はなかなかイメージできない。なぜ、教育や研修において企業理念やビジョンが重要なのか、有馬氏に聞いた。
2025/05/02
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方