【ブリュッセル時事】北大西洋条約機構(NATO)の北方拡大が、昨年4月のフィンランドに続くスウェーデンの加盟で完結した。ウクライナ侵攻を続けるロシアの「直接的脅威」が現実味を帯びる中、北欧2国が軍事的中立と決別し集団防衛体制の一角に組み込まれたことは、バルト海域を中心とするNATOの防衛戦略に多大な影響を及ぼすとみられる。
 冷戦中もNATO加盟の道を選ばなかった北欧2国は、ウクライナ侵攻をきっかけに安全保障政策を大転換。わずか2年で加盟を果たした。NATOは北方拡大によってバルト海を加盟国で取り囲み、スウェーデン領ゴトランド島から約300キロ離れたロシアの飛び地カリーニングラード州ににらみを利かせることも可能になる。
 スウェーデンに先行して加盟したフィンランドは、欧州きっての陸軍部隊を抱えるIT先進国。米シンクタンク、ウィルソンセンターは、強固な民間防衛基盤を持つフィンランドの「備えの精神」は、「他の加盟国が見習うべきモデルだ」と指摘する。
 また、スウェーデンはバルト海沿岸諸国で最長の海岸線を持つ。2018年に徴兵制を復活させたほか、北欧の大国として潜水艦など高性能兵器を多数保有。今年1月に始まった冷戦後最大規模のNATO演習にも参加している。
 書面インタビューに応じたフィンランド国際問題研究所のイロ・サルカ主任研究員は、特にスウェーデンの海軍力について、NATOの「大きな資産になる」と評価。スウェーデンが「バルト海域の集団防衛と安全保障、後方支援の拠点」としての役割を果たすとみる。
 ただ、北方拡大にロシアが反発を強めるのは必至だ。同国と1300キロ以上に及ぶ国境を接するフィンランドでは、加盟後にロシアの関与が疑われる移民流入が急増し、国境で緊張が高まっている。サルカ氏は、ロシアが今後もサイバー攻撃や偽情報の拡散、領空侵犯など「さまざまな手段を駆使」して北欧2国に揺さぶりをかける可能性が高いと警戒感を示す。 

(ニュース提供元:時事通信社)