第三者委員会とはどのような立場でどのような役割を負う組織なのか(イメージ:写真AC)

はじめに

近時、とみに「第三者委員会」という用語を報道で頻繁に見聞きするようになりました。

大活躍していたテレビタレントが、その立場等を利用してテレビ局スタッフに対して不適切な性的対応をしたのではないかということが社会を賑わせ、ひいてはテレビ局の経営を揺るがす事態となり、この出来事について第三者委員会による調査が実施されることになりました。

その調査結果が公表されたこともあり、とりわけ、連日に渡って、第三者委員会という用語が報道で用いられることになりました。

さらには、事態が沈静化したと思われていたところで、渦中の元テレビタレントが第三者委員会の調査等に対して異議を申し立てたため、事態が再燃し、再び報道等において第三者委員会が連呼される状況になっています。

第三者委員会と聞いて、その漢字名称や報道内容から、何となくその立場や役割を理解されている方が多いと思いますが、正確にどういうものなのかということについては、心許ない方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで、今回は、第三者委員会について取り上げ、とりわけ、日本弁護士連合会が策定・公表している「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」の概要をご説明するかたちで、第三者委員会とは何かについて考えてみたいと思います。

企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン

第三者委員会については、日本弁護士連合会が「企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン」(2010年7月15日・改訂2010年12月17日)(以下「日弁連GL」)を策定・公表しています。

日弁連GLは、以下のような背景・目的等で策定・公表されたものです。
※引用は全て「『企業等不祥事における第三者委員会ガイドライン』の策定にあたって」(日本弁護士連合会)より。

【社会的背景】
① 不祥事が発生した場合、内部調査委員会では、「株主、投資家、消費者、取引先、従業員、債権者、地域住民などといったすべてのステーク・ホルダーや、これらを代弁するメディア等に対する説明責任を果たすことは困難となりつつある」こと

② 「ステーク・ホルダーに代わって企業等を監督・監視する立場にある行政官庁や自主規制機関もまた、独立性の高いより説得力のある調査を求め始めている」こと

③ ①②により、「企業等から独立した委員のみをもって構成され、徹底した調査を実施した上で、専門家としての知見と経験に基づいて原因を分析し、必要に応じて具体的な再発防止策等を提言するタイプの委員会」である第三者委員会が注目されることとなったこと


【策定の目的等】
① 「今後、第三者委員会の活動がより一層社会の期待に応え得るものとなる」こと

② 「依頼企業等からの独立性を貫き断固たる姿勢をもって厳正な調査を実施するための「盾」として、本ガイドラインが活用されること」


【日弁連GLの性質】
・ 「第三者委員会があまねく遵守すべき規範を定めたものではなく、あくまでも現時点のベスト・プラクティスを取りまとめたもの」

以上をごく簡潔に要約するとすれば、企業等不祥事に対する第三者委員会の役割への期待が高まっている中、その主要なメンバーとなる弁護士がより一層社会の期待に応えることができるよう、規範としてではなく、現在のベストプラクティスを取りまとめたもの(会員弁護士を拘束するものではない)が日弁連GLということになるでしょう。

策定・公表から15年近く経った日弁連GLですが、第三者委員会による調査報告書では、冒頭において当該第三者委員会の日弁連GLへの準拠の説明がなされているなどしており、現在でも第三者委員会実務の指針として用いられているものです。