改正債権法の施行から約6年を機に、保証意思宣明公正証書とは何かをあらためて確認(写真:Adobe stock)

はじめに

市民法の一般法である民法のうち債権関係の改正法(改正債権法)が施行されたのが2020年4月1日でした(一部を除く)。施行前、改正債権法の対応に追われて大変だったという記憶が思い出される方もいらっしゃると思います。

契約分野に関する企業実務に多大な影響を与えたいわばビッグイベントから6年近くが経とうとしています。皆様はすっかり改正債権法に慣れていらっしゃることと思います。しかしながら、慣れというのは恐ろしいところがあるものです。記憶に頼り過ぎてしまって、うっかり改正前の規律で対応してしまいそうになったことはないでしょうか。

そのようなうっかりが原因で契約の効力が否定されてしまうような事態に直面してしまった事例があるようですので、皆様に改めてご留意いただきたいということもあり、今回は保証契約の特則として設けられている保証意思宣明公正証書について取り上げてみたいと思います。

要式契約としての保証契約

「契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(略)に対して相手方が承諾をしたときに成立」(民法522条1項)し、「契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない」(同条2項)とされています。

民法522条2項は契約自由の原則のうち方式の自由について(確認的に)規定したものです。この方式の自由の下、例えば、売買契約(民法555条)は、当事者間に目的物と代金についての合意があれば、契約書がなくとも成立することになります。

これに対し、上記の「特別の定め」がある契約の一つが保証契約ということになります。保証契約は効力発生要件として書面または電磁的記録で締結することが求められています(民法446条2・3項)。この意味で、保証契約は要式契約であるといわれます。

事業用融資の保証の際の保証意思宣明公正証書

事業用融資の保証の際は、保証人になろうとする者が公正証書によって保証債務の履行意思を示す必要がある(写真:Adobe stock)

保証契約は要式契約として書面または電磁的記録での締結が求められるわけですが、さらに、締結しようとしている保証契約が次の➊または➋である場合(事業用融資である場合)には「その契約の締結に先立ち、その締結の日前1箇月以内に作成された公正証書で保証人になろうとする者が保証債務を履行する意思を表示していなければ、その効力を生じない」(民法465条の6第1項)とされています。

➊事業のために負担した貸金等債務を主たる債務とする保証契約

➋主たる債務の範囲に事業のために負担する貸金等債務が含まれる根保証契約


※貸金等債務=金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務(民法465条の3第1項)

このように、事業用融資の保証の際には、保証人になろうとする者が公正証書により保証債務履行意思を表示しなければならないとされており、その際に作成される公正証書のことを「保証意思宣明公正証書」といいます。

なお、「事業」とは「一定の目的をもってされる同種の行為の反復的・継続的な遂行を意味」し、「「営利」という要素は必要ではない」と解されています(潮見佳男『民法(債権関係)改正法の概要』金融財政事情研究会、平成29年、141頁)。