対話と信頼の重要性

ジョエル:支援に夢中になると、相手の状況を見失いがちです。

チャールズ:その通りです。私のマインドセットが間違っていた。「助けに来た」という思い込みが、現地の現実を見えにくくしていました。

ジョエル:職員にとっても、初めての経験だったかもしれません。

チャールズ:そうです。災害対応は多くの場合、職務記述書に明記されているものではなく、「誰が何をすべきか」が明確でない状況です。

能登半島地震での教訓

ジョエル:能登半島地震では、NGOやNPOが受け入れられる状況はどうでしたか?

チャールズ:非常に困難だったと聞いています。行政の中でも指示が食い違い、JVOADの報告によれば、5月5日時点で300以上の団体が活動していたそうです。これは行政側にとっても圧倒的な数で、調整は非常に難しい状況でした。

日本では、軍による封鎖のような障壁はありませんが、高速道路通行証など、技術的な面は災害ごとに変わります。最も重要なのは、「私たちが誰で、どう備え、どう対話するか」という姿勢です。アクセスとは、技術ではなくマインドセットです。

ジョエル:外部支援者が日本で受け入れられるためには、どんな優先事項がありますか?

チャールズ:まず法制度です。あなたが翻訳した法律は、誰が責任を持つのかを明確にしています。特に医療や建設などの分野では、認可を得る必要があります。

ジョエル:赤十字や国連のような組織も同様ですよね。

チャールズ:そうです。例えば、日本赤十字が要請しなければ、他国の赤十字の資金は使われません。国連も日本政府からの要請がなければ入国・活動できません。政治的・実務的な理由もありますが、「今は自力で対応できる」という判断も含まれているでしょう。

ジョエル:日本の災害対応文化では、自立性と法制度が重視されるため、外部アクターが入りにくいですね。

チャールズ:そのとおりです。日本では、官僚が「コミュニティの利益のために働く」と信頼されています。これは第二次世界大戦後の占領時代からの歴史でもあります。地方自治体を住民が信頼し、NGOよりも頼りにする傾向があります。

ジョエル:しかし、実際には災害対応の経験が乏しい担当者も多く、異動で知識のギャップが生じています。

チャールズ:日常業務では優れた官僚も、災害時には柔軟性が求められ、それが裏目に出ることがあります。「公平性」を優先する気持ちは理解できますが、緊急時には優先順位の明確化が求められます。