2023年11月に噴火するクリュチェフスカヤ山(AP/アフロ)

7月30日に発生した、カムチャツカ半島沖を震源とするマグニチュード8.7の地震は、遠く離れた日本の太平洋沿岸一帯に、広く警報を発令させるほどの津波をもたらした。さらにカムチャツカ半島では地震発生後に、クリュチェフスカヤ火山が噴火した。巨大地震がこの噴火の引き金になったのか。地震と噴火の関係について、火山と地震の観測が専門で、調査のために約20回もカムチャツカ半島に足を運んでいる、北海道大学理学研究科附属地震火山研究観測センター教授の高橋浩晃氏に聞いた。

高橋 浩晃 氏
(たかはし ひろあき)
1998年、北海道大学理学研究科附属地震火山研究観測センター助手に就任。2007年より同センター准教授、2017年より教授を務める。北海道防災会議地震火山専門部会委員や原子力規制委員会原子炉安全専門審査会の審査委員、地震調査研究推進本部地震調査委員会委員などを歴任。

ーーカムチャツカ半島沖の地震に続いて、半島内のクリュチェフスカヤ火山が噴火しました。この噴火は地震に誘発されたのでしょうか。
データが揃っていないので確定的ではありませんが、現段階では地震に関係なく、以前からの活動の延長にあると考えています。7月30日に噴火したクリュチェフスカヤ火山は、頻繁に噴火している火山です。

ーーカムチャツカ半島では噴火が活発です。なぜでしょうか。
カムチャツカ半島の東側に位置する海溝に太平洋プレートが沈み込んでいるからです。日本の太平洋側と同様です。ただし、日本以上に火山活動が活発な地域です。カムチャツカ半島には、30日に噴火したクリュチェフスカヤ火山だけでなく、2023年に大規模な噴火を起こしたシベルチ火山など数十の活火山が存在し、断続的に噴火が発生しています。数年ごとに、どこかで大規模な噴火が発生しているような場所です。上空10キロまで火山灰を吹き上げるケースも珍しくありません。

シベルチ火山の噴火(Adobe Stock)

ーー日本よりカムチャツカ半島の火山活動が活発な理由は。
そこはまだわかっていません。研究を進めているところです。カムチャツカ半島の火山は、溶岩が山頂や山腹から流れ出る噴火や、山ごと吹き飛ばす爆発的噴火といった、様々なタイプの噴火が頻繁に発生しています。火山周辺にはあまり人が住んでいないため、噴火しても災害にならない場所。そこで、噴火メカニズムの研究が進められています。

ーーカムチャツカ半島内の噴火は、日本にどのような影響を与えますか。
北海道からでも1500キロ離れているので、直接的な影響はありません。例外は航空機です。噴煙が流れる東方向に、日本と北米を結ぶ航空路があり火山灰の影響を受けます。火山灰の監視が非常に重要で、空域モニタリングを担当しているのは日本の気象庁です。

ーー7月30日の地震が日本の地震活動に与える影響は。
距離がだいぶ離れているため、今回の地震の直接的な影響はないでしょう。ただし、震源の南側に隣接する千島列島北部の地震活動は影響を受ける可能性があります。この地域でも巨大地震が繰り返し発生しています。今回のように津波警報につながる地震の発生は、長期的には想定しておいたほうがいいでしょう。