株式会社スギヨ 本社・北陸工場

2024年1月に発生した能登半島地震により、大きな被害を受けた水産練製品メーカーの株式会社スギヨ(本社:石川県七尾市)。その再建を支えたのは、同社の商品を心から愛する消費者の存在だった。全国に複数の工場があり、多くの商品について代替生産に踏み切る一方、主力商品の1つ「ビタミンちくわ」に関しては「能登で生産している」という顧客の期待を重視し、あえて現地工場の再開を待つという異例の判断を下した。結果として、消費者からの強い支持を受け、ビタミンちくわは過去最高近い売り上げを記録している。一方、BCPでは大規模な地震などが想定されていないなどの課題も明らかになった。同社では今、BCPの立て直しを進めている。

歴史ある食品メーカーの試練

スギヨは江戸時代初期に創業し、水産練製品や総菜の製造を行う老舗企業である。全国的には世界初のカニカマ開発企業として知られるが、長野県では「ビタミンちくわ」というローカルブランドが強い存在感を持つ。

そんなスギヨの工場に、震度6強の地震が襲った。七尾には、北陸工場(本社併設)、商業団地工場、能登半島工場の3拠点があるが、すべてが被災。特に海岸に近い能登半島工場は解体せざるを得ないほどの被害を受け、北陸工場も天井の崩落や水道インフラの損壊により操業停止を余儀なくされた。

BCPはあったが、主に火災を想定したもので、今回のような広範囲かつ長期間の被災に対する準備は不十分だった。「多くの社員が被災し、出社できなくなるような状況は正直、想定できていませんでした」と管理本部本部長の山瑞正人氏は自戒する。