2025/07/26
防災・危機管理ニュース
政府の個人情報保護委員会(個情委)委員長に5月に就任した手塚悟氏が時事通信社のインタビューに応じた。個人情報保護法の3年ごとの見直しを巡り、個人情報の悪用で得た利益に対する課徴金を「導入すべきだ」と話した。人工知能(AI)産業を発展させるためには、悪質な事業者を取り締まり、ガバナンスの確保が必要だと述べた。主なやりとりは次の通り。
―課徴金への経済界の反発が強く、先の通常国会では同法改正案が見送られた。
「課徴金」という言葉だけ聞くと、ビジネスが萎縮するなど慎重になる。だが、実際に想定している制度は、悪質な違反者を取り締まるもので、真面目に取り組む事業者にとっては、極端に言うと関係ない。
―就任後、課徴金へのイメージは変わったか。
変わったというより、ふに落ちた感じだ。AIの登場で世の中は変化している。AIは生き物みたいなものだから、データを学習させて成長させる必要がある。そこに個人情報が入っていたら、現行法制では本人の同意が事前に必要となる場合がある。ある程度は、例外規定などによって対応してきたが、これでは技術開発の速度に追い付かない。事後型の規制に転換する時だ。AI開発などにのみ利用される場合、原則本人同意なしで個人情報を利用できるように提案しているが、そのためには事業者のガバナンス体制を確保する必要がある。
―個人情報保護法の目的は。
データ利用が健全に発展するために不可欠なルールだ。先進7カ国(G7)で課徴金を導入していないのは日本とカナダだけだ。現行制度のままでは日本はAI開発競争で世界と同じ土俵で戦うことはできない。
―同法の見直しでは子どもの保護も論点の一つ。年齢確認技術の活用をどう考えるか。
今後、検討が必要になる。子どもはまだ判断力が発達過程にあり、大人と同じレベルとは言えない。子どもの利用を想定したシステムやテクノロジーが大事だ。
―改正案の提出時期は。
早期提出を目指しているが、具体的な時期は念頭に置いていない。これまでは主に、法律の専門家が個情委の委員長として基盤を作ってきた。今問われているのは、データ戦略であり、技術を専門とする私に役割が回ってきた。個人情報保護行政は次のフェーズに入ったということだろう。データ利用と保護の整合性を持たせ、内容をきちんと詰めていくのが責務だ。
〔写真説明〕インタビューに答える個人情報保護委員会の手塚悟委員長=15日午前、東京都千代田区
(ニュース提供元:時事通信社)

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