7月30日、ロシア・カムチャツカ半島付近の地震による津波が日本列島に到達。太平洋沿岸部を中心に広い範囲で津波警報が発表された。揺れをともなわないなかで突然発表された警報に戸惑った企業も多いのではないか。今回、大きな被害はなかったが、南海トラフ地震では短時間でより大きな津波が襲う。教訓として残ったものは何か。企業の振り返りと専門家へのインタビューを通じ、津波対策の課題と改善点を探る。

企業は何が課題だったのか?

揺れの体感がないなかで発表された津波警報に、多くの企業が戸惑いを隠せなかった。安否確認、情報共有、避難や待機の指示などはどのように行われ、何が課題となったのか。危機管理担当者の声と対応事例から振り返る。

気象庁報道発表「令和7年7月30日08時25分頃のカムチャツカ半島付近の地震について(第2報)」

安否確認や避難の判断に迷い

遠方の地震による津波を対象にした初動ルールは、大半の企業が未整備だったようだ。「社員の安否確認や情報共有、避難をどうするか判断に迷った」という声が、本紙に複数寄せられた。

安否確認システムを使って情報を伝えたところも多かったが「発報のタイミングが難しかった」という声や、なかには「考え悩んだ末にあえて発報しなかった」という声も。

避難や待機の指示では「自治体の避難情報の把握に苦慮した」という振り返りが複数。また公共交通機関の長時間停止によって帰宅困難者が発生した企業からは「宿泊や早期帰宅など十分な対応ができなかった」という反省もあった。

顧客対応の面では、デイサービスを営む企業から「沿岸部に住む人以外は家族に迎えに来てもらったが、日中で連絡が取りづらかった。大きな震災になるともっと連絡できなくなる」という不安も。

同じく介護施設で、沿岸部の利用者を高台の別の施設に車で避難させた企業からは「今回は移動できたが、大震災時は渋滞で移動できないかもしれない」という懸念も示された。