人気アパレルブランドのカスハラ注意喚起が炎上!?
第19回:被害者ポジション争いの構造
吉野 ヒロ子
1970年広島市生まれ。博士(社会情報学)。帝京大学文学部社会学科准教授・内外切抜通信社特別研究員。炎上・危機管理広報の専門家としてNHK「逆転人生」に出演し、企業や一般市民を対象とした講演やビジネス誌等への寄稿も行っている。著書『炎上する社会』(弘文堂・2021年)で第16回日本広報学会賞「教育・実践貢献賞」受賞。
2025/12/12
共感社会と企業リスク
吉野 ヒロ子
1970年広島市生まれ。博士(社会情報学)。帝京大学文学部社会学科准教授・内外切抜通信社特別研究員。炎上・危機管理広報の専門家としてNHK「逆転人生」に出演し、企業や一般市民を対象とした講演やビジネス誌等への寄稿も行っている。著書『炎上する社会』(弘文堂・2021年)で第16回日本広報学会賞「教育・実践貢献賞」受賞。
近年、企業が顧客の威圧的な行動や言動から「従業員を守る」姿勢を示すことは当然だとされるようになりました。しかし、カスハラに法的対応をとるとしたメッセージが「顧客を敵視している」と受け取られ、炎上してしまったケースも発生しています。
カスハラからの保護は、従業員にとっては当然の権利であり、企業にとっては義務でもあるのに、なぜ炎上してしまうのでしょうか。今回は2025年9月に発生した、アパレルブランド「pium(ピウム)」の「カスハラ注意喚起」が炎上してしまった事例から考えてみたいと思います。
2025年9月末、若い女性に人気のアパレルブランド「pium(ピウム)」が、X(旧Twitter)に投稿した一文が炎上しました。
一部のお客様による過度な言動・要求につきまして、弊社スタッフや業務に重大な支障を及ぼすケースが確認されております。
これらの行為は『カスタマーハラスメント』に該当し、他のお客様へのサービス提供にも悪影響を及ぼすため、断固たる対応を取らせていただきます。
一見、いかにも真っ当な注意喚起に見えます。ところが、この投稿には4000件以上のコメントが殺到し、それなりの炎上となりました。炎上のきっかけは、投稿直後にX上に出た引用リポストでした。
あるユーザーが、
と投稿したのです。
ちなみに、piumの公式サイトを見ると、スカートはすべてミニ丈でウエスト61センチとか58センチのワンサイズのみ。ワンピースだとデザインによってはウエスト68センチのものもありますが、こちらもフレアやティアードなど膨らむタイプのミニ丈が多いので、確かに華奢な人が着るのを前提としたデザインではあります。
価格帯は1万円前後くらい。もともと、インフルエンサーのさやぴさんがプロデュースしており、「かわいいを諦めない」というブランドコンセプトを掲げています。
いずれにせよ、先の引用リポストが、瞬く間に拡散され、18万件のいいねを獲得。「苦情をカスハラ扱いするのか」などの批判が噴出し、翌日、piumは謝罪文を出すことになりました。
【参考】
『苦情はカスハラ扱い』と批判殺到…人気ブランドの“上から目線”注意が大炎上→謝罪も鎮火せず(女性自身)
https://jisin.jp/entertainment/entertainment-news/2521562/
『顔と体形のせいで書類すら通らない』… 女子向けブランド炎上が暴いた、アパレル業界の “採用ジレンマ” … 重要なのは 《見た目》 か 《人間性》 か?(LASISA)
https://lasisa.net/post/115606
しかし、店員に陰口を叩かれたユーザーがクレームをつけたかなにかして、トラブルになったことが実際にあったとしても、そのことがカスハラ告知につながったとは限りません。全然別の、カスハラに相当する行為が重なって、それに対して警告を出したら、変な方向に飛び火した可能性も十分あります。
なんだかよくわからない、もやもやする事例です。
共感社会と企業リスクの他の記事
おすすめ記事
防災は面白くないと広がらない
地震が起きたとき、スマートフォンに通知された情報を頼りに避難を判断することが多いだろう。緊急地震速報の情報から、いまどのように動くべきかを判断できる、そんな身近な危機管理を習慣づけた1 社が、アールシーソリューション(東京都新宿区)だ。2010 年に提供開始したスマートフォンアプリ「ゆれくるコール」は、緊急地震速報を受信できるアプリとして多くのユーザーが利用している。代表取締役の栗山章さんは、数多くのユーザーに防災の重要性を広めてきた一方で、ビジネスとして成り立たせる難しさにも直面してきたという。これまでのサービス開発の経緯や、防災ビジネスへの価値観を聞いた。
2026/09/09
被災施設への再入場判断「戻ってはいけない」では解決しない避難後の問題
大地震が発生し、安全な場所へ避難して一息つくと、人々には「ひとまず危険のピークは過ぎた」という根拠なき安心感が芽生える。そして、さまざまな理由で「避難してきた場所に戻りたい」といった気持ちが生じる。しかし、被害がどの程度なら戻ってよいのかについての明確なルールや事例は、どこを探してもあまり見当たらない。 国には応急危険度判定という仕組みや、施設管理者が建物を緊急点検するための指針などもある。が、これらは避難直後の「戻りたいニーズ」に応える仕組みではない。ここに、避難直後の「再入場」という古くて新しい問題がある
2026/09/09
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/09/08
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2026/09/07
暗黙知を形式知へ、10年の徹底改善が生きた
熊本市の工務店・新産住拓株式会社(小山英文社長)は、2016年の熊本地震や近年相次ぐ豪雨災害を通じて災害対応を磨き上げてきた。発生当日は、約3割の社員が定休日で社長も不在という条件下にもかかわらず、地震発生から50分で社員の安否確認をおおむね完了し、2時間後にはホームページや顧客専用サイトで被害受付を開始した。
2026/08/24
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方