顧客の威圧的な言動や行動から従業員を守るのは企業として真っ当な姿勢に思えるが(写真:Adobe stock)

近年、企業が顧客の威圧的な行動や言動から「従業員を守る」姿勢を示すことは当然だとされるようになりました。しかし、カスハラに法的対応をとるとしたメッセージが「顧客を敵視している」と受け取られ、炎上してしまったケースも発生しています。

カスハラ注意喚起が炎上(写真:Adobe stock)

カスハラからの保護は、従業員にとっては当然の権利であり、企業にとっては義務でもあるのに、なぜ炎上してしまうのでしょうか。今回は2025年9月に発生した、アパレルブランド「pium(ピウム)」の「カスハラ注意喚起」が炎上してしまった事例から考えてみたいと思います。

「断固たる対応」声明が呼んだ反発

2025年9月末、若い女性に人気のアパレルブランド「pium(ピウム)」が、X(旧Twitter)に投稿した一文が炎上しました。

一部のお客様による過度な言動・要求につきまして、弊社スタッフや業務に重大な支障を及ぼすケースが確認されております。
これらの行為は『カスタマーハラスメント』に該当し、他のお客様へのサービス提供にも悪影響を及ぼすため、断固たる対応を取らせていただきます。

一見、いかにも真っ当な注意喚起に見えます。ところが、この投稿には4000件以上のコメントが殺到し、それなりの炎上となりました。炎上のきっかけは、投稿直後にX上に出た引用リポストでした。

あるユーザーが、

試着中に定員さんがこれ細い人が着る服なのにねwよく足出せるねなどの話声が聞こえてきました。店内に私たちしかいなかったのですぐに分かりました。

と投稿したのです。

ちなみに、piumの公式サイトを見ると、スカートはすべてミニ丈でウエスト61センチとか58センチのワンサイズのみ。ワンピースだとデザインによってはウエスト68センチのものもありますが、こちらもフレアやティアードなど膨らむタイプのミニ丈が多いので、確かに華奢な人が着るのを前提としたデザインではあります。

価格帯は1万円前後くらい。もともと、インフルエンサーのさやぴさんがプロデュースしており、「かわいいを諦めない」というブランドコンセプトを掲げています。

いずれにせよ、先の引用リポストが、瞬く間に拡散され、18万件のいいねを獲得。「苦情をカスハラ扱いするのか」などの批判が噴出し、翌日、piumは謝罪文を出すことになりました。

【参考】
『苦情はカスハラ扱い』と批判殺到…人気ブランドの“上から目線”注意が大炎上→謝罪も鎮火せず(女性自身)
https://jisin.jp/entertainment/entertainment-news/2521562/

『顔と体形のせいで書類すら通らない』… 女子向けブランド炎上が暴いた、アパレル業界の “採用ジレンマ” … 重要なのは 《見た目》 か 《人間性》 か?(LASISA)
https://lasisa.net/post/115606

しかし、店員に陰口を叩かれたユーザーがクレームをつけたかなにかして、トラブルになったことが実際にあったとしても、そのことがカスハラ告知につながったとは限りません。全然別の、カスハラに相当する行為が重なって、それに対して警告を出したら、変な方向に飛び火した可能性も十分あります。

なんだかよくわからない、もやもやする事例です。