大学教育における生成AIのジレンマ
第17回:文系大学生は生成AIとどうつきあっているか
吉野 ヒロ子
1970年広島市生まれ。博士(社会情報学)。帝京大学文学部社会学科准教授・内外切抜通信社特別研究員。炎上・危機管理広報の専門家としてNHK「逆転人生」に出演し、企業や一般市民を対象とした講演やビジネス誌等への寄稿も行っている。著書『炎上する社会』(弘文堂・2021年)で第16回日本広報学会賞「教育・実践貢献賞」受賞。
2025/08/08
共感社会と企業リスク
吉野 ヒロ子
1970年広島市生まれ。博士(社会情報学)。帝京大学文学部社会学科准教授・内外切抜通信社特別研究員。炎上・危機管理広報の専門家としてNHK「逆転人生」に出演し、企業や一般市民を対象とした講演やビジネス誌等への寄稿も行っている。著書『炎上する社会』(弘文堂・2021年)で第16回日本広報学会賞「教育・実践貢献賞」受賞。
生成AIの代表的なサービス「ChatGPT」が公開されたのが2022年。早くも3年が経ちました。最初は「いかにもそれらしい文章をつくりはするけれど、中身はまったくの大嘘を返してくるおもちゃ」くらいの印象でしたが、バージョンを重ねるうちにどんどん賢くなり、周囲でも活用している人が増えてきました。
今年、つまり2025年度前期には、生成AIの普及を強く実感した出来事がありました。1年生のレポート課題で、複数の留学生が、生成AIを利用したレポートを提出してきたのです。
生成AIが若い世代に浸透し、日常的に利用するようになったことの表れだと思います。去年までは、留学生も、自分で書いた日本語のレポートを出してきていたので、事前に生成AI利用に関してアナウンスしておらず、対応に焦る羽目になってしまいました。
企業と同じく、大学もAIの利用には積極的に取り組んでいます。私の本務校である帝京大学でも、学務の効率化にAIを導入したり、適性診断など学生の就活サポートにも活用したりしています。
日頃接している先生方にも、ChatGPTやGeminiに個人で課金して、研究や学務に活用されている方がいらっしゃいます。なかには「向こう数年で、生成AIがどれだけ使いこなせるかで、研究業績に影響が出るようになるだろう」とおっしゃる方もいらっしゃいます。
私はまだ課金していませんが、先日、無料版のChatGPTで校正しながら報告書を書いてみて、確かに書くという行為そのものが変わるかもしれないなと感じました。調査結果をまとめるだけの報告書だったのですが、対話しながら(というより、ChatGPTに褒め倒してもらいながら)書くと、普段のペースの倍くらい書けてしまったのです。
ただし、大学教育において、どう学生に使ってもらうかは、なかなか難しい面があります。レポートで安易に使われてしまうと、本人のライティング能力を評価できなくなるだけでなく、学生が成長する機会を奪ってしまうのは明らかです。このあたりで、周囲の教員の対応も大きく割れています。
キャリア教育系の授業では、自己分析の壁打ちに生成AIを利用するよう勧めているところもあるようです。一方、自らと向き合いながら、紙とペンで自己分析を書くよう指導している教員もいます。課題の作成に生成AIを使った場合は、その旨明記し、下書きやプロンプトを添えるように指導している教員もいます。
今の大学生が社会に出る頃には、現在よりも多くの企業が業務で生成AIを活用しているでしょう。その意味で、生成AIに慣れ、使いこなせるようになっておくべきなのですが、一方で、あまりに早くから生成AIに頼ってしまうと、論理的な思考力を鍛える機会がなくなってしまいます。
なかなか悩ましいところなのですが、そもそも学生はどのように生成AIを使っているのでしょう。
約90名が履修している「広報論」の講義で、リアクションペーパー(授業の感想や質問を書くもの)に、このコラムで使わせてもらうことを伝えた上で、どういう風に生成AIを使っているのか、書いてもらいました。授業の感想のついでに書いてもらったので、量的調査とは異なりますが、ざっくりした傾向をご紹介したいと思います。
共感社会と企業リスクの他の記事
おすすめ記事
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/09/15
防災は面白くないと広がらない
地震が起きたとき、スマートフォンに通知された情報を頼りに避難を判断することが多いだろう。緊急地震速報の情報から、いまどのように動くべきかを判断できる、そんな身近な危機管理を習慣づけた1 社が、アールシーソリューション(東京都新宿区)だ。2010 年に提供開始したスマートフォンアプリ「ゆれくるコール」は、緊急地震速報を受信できるアプリとして多くのユーザーが利用している。代表取締役の栗山章さんは、数多くのユーザーに防災の重要性を広めてきた一方で、ビジネスとして成り立たせる難しさにも直面してきたという。これまでのサービス開発の経緯や、防災ビジネスへの価値観を聞いた。
2026/09/09
被災施設への再入場判断「戻ってはいけない」では解決しない避難後の問題
大地震が発生し、安全な場所へ避難して一息つくと、人々には「ひとまず危険のピークは過ぎた」という根拠なき安心感が芽生える。そして、さまざまな理由で「避難してきた場所に戻りたい」といった気持ちが生じる。しかし、被害がどの程度なら戻ってよいのかについての明確なルールや事例は、どこを探してもあまり見当たらない。 国には応急危険度判定という仕組みや、施設管理者が建物を緊急点検するための指針などもある。が、これらは避難直後の「戻りたいニーズ」に応える仕組みではない。ここに、避難直後の「再入場」という古くて新しい問題がある
2026/09/09
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2026/09/07
暗黙知を形式知へ、10年の徹底改善が生きた
熊本市の工務店・新産住拓株式会社(小山英文社長)は、2016年の熊本地震や近年相次ぐ豪雨災害を通じて災害対応を磨き上げてきた。発生当日は、約3割の社員が定休日で社長も不在という条件下にもかかわらず、地震発生から50分で社員の安否確認をおおむね完了し、2時間後にはホームページや顧客専用サイトで被害受付を開始した。
2026/08/24
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方