【ロンドン時事】米イスラエルのイラン攻撃で、世界から投資マネーを集める中東湾岸諸国の経済成長の行方に影が差している。石油施設に加え、生命線の海水淡水化施設も狙われ、地政学的リスクが顕在化。比較的治安が安定しているという「ステータス」(英紙)が揺らいでいる。混乱が長期化すれば、石油依存からの脱却を目指す経済改革に狂いが生じかねない。
 湾岸協力会議(GCC)諸国は石油・ガス輸出で得た豊富な資金を活用し、石油頼みの経済の多角化に取り組んでいる。国際通貨基金(IMF)はGCC6カ国の平均成長率が2030年までに年3~4%台と予測。エネルギーのほか、金融や物流、建設分野で日本企業の進出も目立つ。
 アラブ首長国連邦(UAE)のドバイは国家戦略「D33」で、33年までに世界4位の金融センターになる目標を掲げる。人工知能(AI)などのデジタル技術を振興し、国内総生産(GDP)を23年から10年間で倍増させる計画だ。
 サウジアラビアは16年に「ビジョン2030」を策定。非石油GDPに占める非石油輸出の割合を16%から30年までに50%に引き上げる。国営石油会社サウジアラムコの株式上場で得た巨額資金などを再生可能エネルギー普及などに使う。カタールやクウェートも高度人材の育成、インフラ整備を柱とした経済改革を進める。
 だが今回、イランの報復攻撃で被害地域が拡大し、ドバイ国際空港では死傷者が出た。バーレーンでは8日、海水淡水化施設が無人機の攻撃で損傷。米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、湾岸諸国では同施設がエネルギーインフラ以上に深刻な「アキレス腱(けん)」との専門家の話を紹介した。
 湾岸諸国が取り組む産業構造の多様化は、安全な地域であることを前提に集まった投資マネーや外国人に支えられている側面が大きい。だがカタールのムハンマド首相兼外相は9日、英スカイニューズに対し、「イランの攻撃という誤算はこれまで築いてきた全てを台無しにした」と語り、経済環境が一変したとの認識を示した。 
〔写真説明〕10日、ドバイのビーチに座る観光客向けのラクダ(AFP時事)

(ニュース提供元:時事通信社)