自民党の圧勝の陰にひそむリスクとは(写真:Adobe stock)

日本民主主義の最大の危機

高市人気がとどまるところを知らず、先の衆議院議員選挙では自民党が戦後最大の議席を獲得した。多少の温度差はあるだろうが、この結果は高市氏がこれまで主張してきた政治信条、実績に加え、自民党総裁選から内閣総理大臣就任後の外交活動などに賛同し、今後の成果を期待したものと考えてよいだろう。

得票総数だけでいえばそこまでの大勝ではないという意見もあるが、大きく議席が変動する小選挙区制ゆえの330議席(候補者不足で316議席に減)獲得であって、制度上の特徴なのだから仕方がない。

議席数が民意を反映して動くとは限らない(写真:Adobe stock)

この議席数が選挙で示された民意に沿った活動を実行するならば、それがたとえポピュリズム的に民意が動いた民主主義のエラーだったとしても、民主主義を選択する国民としてそのリスクは享受しなければならない。しかし、示された民意に反する方向にこの議席数が動くのであれば、それは決して許されるものではないはずだ。

が、許されない事象といいながら、その実、日本の民主主義は歴史的にそのリスクを内包してきた。あくまで政権与党の性善説を前提に、その時の民意や支持に寄り添って、自浄作用を働かせて柔軟に方向の修正が行われてきただけである。

それが、風に乗って小選挙区制度にも背中を押された当時の民主党が選挙公約を守れず政権を降りた後、安倍一強体制による長期政権が生まれた。振り返ると、保守岩盤支持層を固めつつ、政策自体は保守系に偏らずバランスよく、労働政策や外国人政策などにも着手している。いわゆる保守岩盤支持層からは批判を受ける政策も実行しながら、そのギリギリのところを抑えるバランスを維持していたといってよいだろう。

その後岸田政権になり、このバランスが崩れ始め、保守岩盤支持層の許容範囲を超え出した。当初は安倍政権時に獲得した議席数の余韻があったが、徐々に支持を失い、石破政権に移行しながら、最終的には衆参過半数割れという事態にまで発展した。そして生まれたのが高市政権である。

この10~20年の政局を大局的に見れば、民意の方向性は明示され、現役世代である若者層であるほどその傾向が強いのが実態であろう。ならば、今回の316議席がこの民意を汲み取った数と考えるべきなのだが、実態は異なっている。大きな力を持ったまま、民意に反する方向にシフトするリスクが戦後最大の状態に陥ったと筆者は考えている。