「偽警告」「ビジネスメール詐欺」など手口を知ることが一番の防御策になる(出典:写真AC)

情報処理推進機構(IPA)は1月30日、「情報セキュリティ10大脅威2018」を発表した。 同ランキングは、情報セキュリティ分野の研究者、企業の実務担当者などからなる「10大脅威選考会」が 情報セキュリティにおける脅威のうち、社会的影響が大きかったトピックを 個人部門と組織部門に分けて「10大脅威」として発表するもの。IPAが2011年から毎年開催している。「偽警告」「ビジネスメール詐欺」といった新たなキーワードがランクインした。

ランキングの結果、個人は「インターネットバンキングやクレジットカードの不正利用」 、組織は「標的型攻撃による情報流出」がそれぞれ1位。2位は個人・組織とも「ランサムウェアによる被害」で、上位1・2位は2016年から3年連続変化なし。一方で、個人の10位に「偽警告」、組織の3位に「ビジネスメール詐欺」、組織の5位に「セキュリティー人材の不足」と、3つが初めて10大脅威にランクインした(ランキングは文末参照)。

組織1位の 「標的型攻撃による情報流出」は、企業や民間団体や官公庁等、特定の組織を狙って、メールの添付ファイルやウェブサイトを利用してPCをウイルス感染させ、最終的に個人情報や業務上の重要情報が窃取される。 ウイルスソフトでは対策が難しく、最も大きな脅威に選ばれた。

個人1位の「インターネットバンキングやクレジットカード情報の不正利用」は、従来のウイルス感染やフィッシング詐欺により、インターネットバンキングから不正送金や不正利用の被害は減少傾向にある一方で、新たに仮想通貨取引所の利用者を狙った攻撃が確認されるなど、依然として大きな脅威となっている。

今回は「個人」と「組織」を合わせた 20 の脅威のうち8割にあたる16の脅威が前回に引き続きランクインした。一方で初めて10大脅威にランクインしたのは3項目。個人の 10位に初めてランクインした「偽警告」は、PCやスマートフォンでウェブサイトを閲覧中に、突然「ウイルスに感染している」といった偽警告が表示され、偽警告の指示に従わせて 個人情報等を窃取されたり、架空のセキュリティソフトを購入させられてしまう。

 組織の3位に初めてランクインしたのが「ビジネスメール詐欺」。巧妙に細工したメールのやりとりにより、企業の担当者を騙し、攻撃者の用意した口座へ送金させる詐欺の手口。これまで主に海外の組織が被害に遭ってきたが、2016年以降、海外取引をしている国内企業でも被害が確認されているという。  

組織の5位に初めてランクインした「 セキュリティ人材の不足 」は、セキュリティ上の脅威が今後も発生し続けるなかで、セキュリティの知識、技術を有する人材が圧倒的に不足している現状に対する企業の危機感が反映された結果となった。

このほか組織4位の「脆弱性対策情報の公開に伴い公知となる脆弱性の悪用増加 」は、 前々回の6位を経て昨年ランク外だったものが、今回再びランクインした。近年迅速に公表されるようになった脆弱性対策情報が、対策前のシステムを狙うために悪用される事態が改めて脅威として注目された。

IPAは「情報セキュリティ10大脅威 2018」の詳しい解説を 3月下旬に ウェブサイトで公開する予定。

■「情報セキュリティ10大脅威2018」   カッコ内は前回順位

<個人>
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第1位 インターネットバンキングやクレジットカード情報の不正利用(1位)
第2位 ランサムウェアによる被害(2位)
第3位 ネット上の誹謗・中傷(7位)
第4位 スマートフォンやスマートフォンアプリを狙った攻撃の可能性(3位)
第5位 ウェブサービスへの不正ログイン(4位)
第6位 ウェブサービスからの個人情報の窃取(6位)
第7位 情報モラル欠如に伴う犯罪の低年齢化(8位)
第8位 ワンクリック請求等の不当請求(5位)
第9位 IoT 機器の不適切な管理(10位)
第10位 偽警告(ランク外・新)
 

<組織>
------------------------ 
第1位 標的型攻撃による情報流出(1位)
第2位 ランサムウェアによる被害(2位)
第3位 ビジネスメール詐欺(ランク外・新)
第4位 脆弱性対策情報の公開に伴い公知となる脆弱性の悪用増加(ランク外)
第5位 セキュリティ人材の不足 (ランク外・新)
第6位 ウェブサービスからの個人情報の窃取(3位)
第7位 IoT 機器の脆弱性の顕在化(8位)
第8位 内部不正による情報漏えい(5位)
第9位 サービス妨害攻撃によるサービスの停止(4位)
第10位 犯罪のビジネス化(アンダーグラウンドサービス)(9位)
 
■ニュースリリースはこちら
https://www.ipa.go.jp/security/vuln/10threats2018.html

(了)

リスク対策.com:峰田 慎二