タイ北部の河川で有害物質が検出され、人々の生活に深刻な影響が出ている。隣国ミャンマーで進むレアアース(希土類)や金の採掘が原因の水質汚染とみられ、国際河川のメコン川やその支流で変形した食用の魚が確認された。流域で健康被害への懸念が広がっている。
 異変が確認されたのは2024年5月ごろ。メコン川支流のコック川で、体表に幾つものこぶ状の腫れができた食用の魚が見つかった。タイ北部チェンライ県の水産局は当初、天候や水温の変化による病気とみていたが、同様の魚が複数確認された。
 その後、現地当局などによる調査で、魚の体内から基準値を超えるヒ素や水銀、鉛が検出され、上流の鉱物採掘による汚染の可能性が浮上した。コック川はミャンマー北東部シャン州を源流とし、タイ北部を通ってメコン川に合流する。
 ミャンマーはレアアースが豊富に埋蔵されていることで知られる。同国の市民団体「シャン人権基金」は昨年、シャン州のコック川沿いで鉱山開発が拡大していると指摘。鉱山は中国と関係が近いとされる少数民族武装勢力「ワ州連合軍」とミャンマー国軍が共同支配する地域にあり、情報筋によると、中国企業が運営しているという。
 タイのNGO「リビング・リバー協会」は、川の汚染で30の少数民族を含む流域住民約100万人に影響が出ていると推定している。協会のソムギャット会長は「鉱害の確認後、人々はパニックに陥り、魚を買ったり食べたりすることを恐れるようになった」と説明。発疹の症状を訴える漁業者も出ており、住民らは川の水に触れるのを避けている。
 タイには漁業法や環境保護に関する法律があるが、国境をまたぐ国際河川には適用できない。ソムギャット氏は「現状、住民だけでできる解決策はない」と強調。「根本的な解決には鉱業そのものに対処する必要がある。国内の対応だけでなく、国際レベルでの解決を求めている」と訴えた。(チェンライ=タイ=時事)。 
〔写真説明〕タイ北部を流れるメコン川支流のコック川=4月28日、タイ・チェンライ県
〔写真説明〕タイ北部での鉱害について説明するタイのNGO「リビング・リバー協会」のソムギャット会長=4月28日、タイ・チェンライ県

(ニュース提供元:時事通信社)