気象庁は17日、台風情報の高度化に向けた有識者検討会で報告書案をとりまとめた。台風災害の被害を最小限に抑えるため、発生前から接近・上陸に至るまでの一連の情報提供体制の見直しと精度向上を図る内容で、2030年頃を目標に段階的な改善を進める。

報告書案では、現在の「予報円+暴風警戒域」形式から一歩踏み出し、利用者のニーズに即した情報提供を強化する。具体的には、進路や風、高潮・波浪などの予測をより細かい時間単位で提供し、暴風が吹き始める・終わるタイミングや影響範囲も詳細に示すことで、公共交通機関の計画運休や住民の避難判断を支援する。

さらに、台風発生前からの情報拡充も大きな柱となる。発生の数か月前から「平年より発生数が多い見込み」といった見通し、1か月前には「日本の南に台風が存在する可能性」、1週間前には「熱帯低気圧が台風に発達する可能性」など、段階的な予測情報を発信する。これにより、建設業や海運業などによる事前準備がより的確に行えると期待される。

情報の見やすさにも配慮し、分かりやすい見出しや解説を強化。SNSや動画サイトも活用して住民への周知を進めるほか、鉄道・航空などの事業者向けには詳細な仕様や精度の解説も行う。

技術面では、衛星観測網の拡充やスーパーコンピュータによる予測精度向上、AI技術の活用も盛り込まれた。2030年には台風の3日先の進路予測誤差を100キロ程度にまで縮小することを目指す。

気象庁は今後も技術開発とシステム整備を段階的に進め、台風情報の信頼性と活用性を高めていく方針だ。