画像を拡大 災害時の被災者支援と福祉サービスのイメージ(鍵屋氏提供)

 

会員の多くを占める実務家たち

高齢者や障がい者といった災害時に弱者となりやすい人たちの福祉について、専門的に研究する「日本災害福祉学会」が5月9日に正式に立ち上がった。こうした分野を専門とする学会は、国際的にも珍しいとされる。正会員92人のほか準会員82人、特別会員4団体で構成される。会員には、大学研究者だけでなく、実務を担う福祉施設職員、社会福祉士、国や自治体職員らが多くを占めているのも同学会の特徴だ。初代の共同代表理事に就いた跡見学園女子大学まちづくり学科教授の鍵屋一氏に、発足の背景や今後の取り組みなどについて聴いた。

――母体となった研究会の総会で、学会へと格上げすることが承認されました。学会を発足させるに至った背景について教えてください。

改正災害救助法が2025年5月に成立し、災害救助のメニューに「福祉サービスの提供」が追加されました。ただ、災害福祉といっても、誰を対象にするのかいったことも議論が済まされていない状態だったのです。もちろん、普段、福祉サービスを受けている人は災害時も対象になるだろうというのは分かりますが、それでは、残りのサービスを受けていない人は対象外なのでしょうか。

重度化する被災者に、福祉の手は届くか

災害になれば、例えば、怪我をする人も出てくる。あるいは、避難生活が過酷なために、心身の活力が低下して要介護状態となるリスクが高まった「フレイル」から、実際に要支援になったり、要介護になったりする人も出てくる。本来、福祉支援が必要なのに、隠れて見えなかったという人たちもいる。そういった様々な災害時の福祉支援対象者がいるのに、それに対するアプローチができていないし、また、どの程度まで支援すればいいのかもまだ定まっていないのです。

支援の内容も、どういった具体的なものにしていくべきか。普通であれば、ケアマネジャーが、支援のプラン作りをします。災害時は、そういったサービスができるのかや、そもそも、そのサービスが必要な人はどのくらいの人数がいるのか。こうした問題についても、今までは、定量的にはほぼ研究されてこなかったわけです。

そうすると、定量的に支援が必要な人が分からなければ、どれだけの人を応援として派遣すべきかも分からないというのが現状なわけです。

その辺りの学術的な研究が、これまでは非常に弱かった。そのために、国なども災害時に福祉サービスをどういう風に提供するかについて、なかなか明確に決められなかったという事情があります。平時の福祉サービスの提供は、精密に決められていて、それに対して国がいくら資金を出すかなどが全部定まっています。災害時には、福祉サービスはより必要になるのに、決まっていないんです。

そうした点について、研究者らが自覚的に問題視してきていましたし、学会の必要性を感じていた。実務家らも賛同していただき、今回の学会の立ち上げに至ったということでしょう。

取材に応じる鍵屋氏

――能登半島地震でも、避難生活などが原因で亡くなる災害関連死の多さが指摘されています。抱える課題には、どんなものがありますか?

能登半島地震での災害関連死は、今は500人を超えているとされます。他の被災地でもそうですが、高齢者が多いのは間違いありません。脆弱性の高い人が、関連死してしまう。医療の手当てが届いても、亡くなってしまう。通常時であれば、医療がある程度、病気を治せれば、福祉施設や在宅で福祉サービスを受けて暮らせるのですが、災害時は、その機能が弱っているわけです。

関連死の防止という点では、むしろ、医療側や看護側から福祉面の必要性の声が上がっています。災害派遣医療チーム(DMAT)が、救命した被災者を病院に搬送しても、関連死を断つことができず、医療だけでは足りないということになった。せっかく救命しても、その後を福祉に引き継げなければ、続かないと。

私が、大きい問題だと感じたのは、最期に具合が悪くなった場所が、福祉施設だったという人が一番多いことです。次に避難所で、それから、自宅と続きます。介護施設で亡くなるということは、その施設が福祉サービスを十分に提供できる状態でなかったということでもあります。

なんでもなかった人が、要介護、要支援にどんどん変わっていく。重度化が進み、亡くなっていく。東日本大震災では、福島県だと、新規の要介護患者がやはり4割くらい増えています。おそらく能登半島地震でも増えるだろうと思います。そういう状況が、現地ではあります。