震源周辺の活断層(気象庁)


2026年7月28日午後4時27分ごろ、熊本県熊本地方を震源とするマグニチュード(M)7.1の地震が発生した。震源の深さは約16キロ。宇城市と氷川町で最大震度7を観測し、気象庁は有明・八代海に津波注意報を発表した。気象庁によると発震機構は「東北東-西南西方向に圧力軸を持つ横ずれ断層型」と推定されている。今回の地震のメカニズムや今後の注意点について、東京大学地震研究所の加藤尚之教授と、災害情報やデマ研究の第一人者である兵庫県立大学大学院の木村玲欧教授に聞いた。

日奈久断層帯の「割れ残り」が破壊された可能性

2016年の熊本地震から10年。加藤教授は、以前から熊本地震で日奈久断層帯に「割れ残り」が存在する可能性を指摘し、警戒が必要だと発信してきた。

2016年の熊本地震では、4月14日のM6.5、そして16日のM7.3の地震が連続して発生し、布田川断層帯と日奈久断層帯が活動したと考えられている。加藤教授は今回の地震について、現段階では解析結果が出ていないと断ったうえで、「(2016年の)熊本地震で破壊されずに残っていた日奈久断層帯南西側の割れ残り部分が動いた可能性が高い」とみている。

「2016年にも日奈久断層帯で破壊は起きたが、断層全体が壊れたわけではなく、北東側が主に破壊され、南西側が残った。そこが今回壊れた可能性がある」(加藤教授)

「10年は極めて短い」

一般には「10年も経ったのだから安全ではないか」と考えがちだが、加藤教授はそうした見方を否定する。

「地震による応力変化が別の地震を引き起こすことがある。その影響は時間とともに減少していくと考えられている。活断層地震の発生間隔は千年以上に及ぶことが多い。それに比べれば10年は非常に短い。この程度の時間では。前回の地震の影響はゼロにはならない」(同)。

加藤教授が今後特に気にしているのは、さらに南西側への活動の広がりだ。

「2016年に北側はすでに壊れている。現時点でより注意すべきなのは南側だろう」

気象庁も「過去に大地震発生後1週間程度の間に同程度の地震が続発した事例がある」として、今後1週間程度、特に2~3日は最大震度7程度の地震に注意するよう呼び掛けている。一方で加藤教授は、「危険は数日で終わるわけではない」とも。「もちろん直後が最も可能性は高いが、年単位のスケールで危険が残ることは意識しておいた方がいい」と、中長期的な警戒の必要性を指摘した。

ちなみに、こうした断層の「割れ残り」の問題は熊本だけではないという。

加藤教授は2005年の福岡県西方沖地震を例に挙げ、「警固断層帯周辺でも同様の観点から注意が必要だ」と話す。

東京大学地震研究所 加藤尚之教授

地震直後からデマ拡散
2日後に本震が起きるなどはデマ

一方、木村教授が強い懸念を示したのがSNS上のデマだ。

木村教授によれば、地震発生直後からX(旧ツイッター)上では、

「ななつ星が脱線した」
「今回の地震は前震で、2日後に本震が来る」
「余震はあと数日で収まる」
「地震雲が出ていた」

など、すでに根拠のない情報が相次いでいるという。

また今回の地震と関係のない、例えば2016年の熊本地震の地震被害の画像や映像、もしくはAIなどで生成したような画像や映像なども、今回の地震の被害として投稿されている。

木村教授は、「『○日後に本震(さらに大きな地震)が来る」といった日時の特定や規模を断定することは現在の科学では不可能だ」と強調。その上で、「気象庁が発表している情報が現時点で最も信頼できる情報だ。『一次情報(行政・気象庁・報道)の確認』を徹底してほしい。根拠のない情報に振り回されず、善意であっても根拠不明な情報は拡散しない『よかれ拡散』を防ぐことが重要だ」と訴える。

熱中症、衛生、大雨にも警戒を

木村教授は地震そのものだけでなく、夏季特有の二次災害にも注意を促す。

停電や断水が続く地域では、熱中症や衛生環境の悪化のリスクが高まる。避難生活中に「トイレに行くのを遠慮して水分を控える」ことは、熱中症やエコノミークラス症候群など命に関わる危険がある。意図的に十分な水分と栄養を摂ることが重要だという。また、上下水道の被害状況によっては衛生環境の悪化や感染症、食中毒の発生、車中泊での体調悪化も懸念される。こうした二次災害はしっかりとした知識で防げるものが多い。できるだけ住民同士が細かく声をかけあい、二次災害を防ぐことを最優先にしてほしいと期待する。

猛暑とともに各地で発生している豪雨にも注意が必要だ。気象庁では、揺れの強かった地域では家屋倒壊や土砂災害の危険性が高まっているとして、今後の降雨に注意を呼び掛けている。

支援は「善意の先走り」を避けて

支援側にも注意が必要だ。2016年熊本地震では、支援物資が被災者に届くまでの「ラストワンマイル」が課題となった。今回も道路や交通インフラに大きな被害が出ており、支援物資の輸送に時間がかかる可能性がある。

木村教授は、「親戚などから依頼があって具体的な物資を届けるのならば別だが、今すぐ個人で物資を送り込むのではなく、まずは現地の状況把握を優先すべきだ」と指摘する。被災地を思う気持ちは大切だが、自治体や支援機関の要請を確認した上で、必要に応じて行動することが、結果として被災者の力になる。東日本大震災などでも問題となった「第二の災害(使われない物資の山による物流麻痺)」を起してはいけない。最終的には、物資ではなく、義援金などのかたちで送ることが支援になることもある。

地震学的な警戒と、情報災害への備え。専門家2人は、「正しい情報に基づいて冷静に行動すること」が何より重要だと口をそろえた。

兵庫県立大学 木村玲欧教授