2026/08/10
防災・危機管理ニュース
11月の米中間選挙で、トランプ大統領返り咲きの要因の一つとなったヒスパニック(中南米系)票の行方が注視されている。政権の強硬な移民政策や物価高への不満から共和党離れが進む一方、従来支持を得ていた民主党は「揺り戻し」に期待を寄せる。ただ、ヒスパニック系有権者は特定政党への帰属意識の薄れが指摘され、票の先行きは見通せない。
◇強まる不満
「状況は悪化し続け、今が最悪だ。中間選挙は民主党に投票しなければならない」。南部テキサス州のメキシコ国境周辺地域で建設業を営むベニー・メレンデスさんはこう語気を強めた。7月下旬に同州サンフアンの建設現場を訪れると、周囲はフェンスで囲まれ、「立ち入り禁止」の看板が掲げられていた。移民税関捜査局(ICE)による不当な拘束から従業員を守る対策だという。
第2次トランプ政権発足後、メレンデスさんの周囲では10人ほどが強制送還された。就労許可証を持つヒスパニック系従業員でさえ、ICEの拘束を恐れて身を潜め、現場に姿を見せなくなった。別の建設業の男性は「肌が茶色なら尊厳がないかのように扱われる。これが本当に米国なのか」と憤りをあらわにした。
ヒスパニック系住民の間では、行き過ぎた移民取り締まりに加え、対イラン軍事作戦などに伴う生活費高騰への不満が強まる。ヒスパニック系団体「ユニドスUS」が5月に公表した世論調査では、2024年大統領選でトランプ氏に投票した全米のヒスパニック系有権者のうち、現在は支持しないと答えた割合が25%に上った。
◇根強いトランプ氏支持
中間選挙で上下両院の多数派維持を目指す共和党は、ヒスパニック系の支持継続を見込む。
テキサス州では、トランプ氏が24年大統領選でヒスパニック票の55%を獲得し、民主党を上回った。バイデン前政権の寛容な移民政策などへの反発が背景とされるが、16、20年大統領選ではいずれも民主党がヒスパニック系を固めていただけに、共和党への傾斜は歴史的な転換だった。
国境周辺地域でもトランプ氏支持は根強い。14年に不法移民によって息子を殺害されたマリー・ベガさんは、国境警備強化の必要性を訴える。「トランプ氏は米国を第一に考え、多くを成し遂げてくれる。私たちは苦しみから抜け出せる」と語った。トランプ氏支持の旗を掲げた車列で町を駆け回る「トランプ・トレイン」運動を始めたロランド・ロドリゲスさんも「安全な国境を実現し、子供が安心して学校に通える環境をつくるためだ」と強調した。
◇「オバマ戦略」を踏襲
中間選挙まで100日に迫った7月26日、ヒューストン郊外の集会場に40人ほどが集まった。テキサス州の連邦上院選の民主党候補で、オバマ元大統領の再来との声も上がるジェームズ・タラリコ氏への草の根の支持を広げるためだ。主催者が戸別訪問のリーダー役を募ると参加者は次々と手を挙げた。オバマ氏の選挙戦略を参考にし、投開票日までに100万軒回る目標を掲げる。
民主党は今回の中間選挙を、ヒスパニック票を取り戻す好機と捉える。中でもヒスパニック系人口が増加するテキサス州は、38年ぶりに上院の議席奪還の可能性があるとして注力。タラリコ氏は国境周辺地域を精力的に遊説し、国境警備隊員の増員など新たな政策を打ち出している。
その選挙区の一つで人口の約8割をヒスパニック系が占める連邦下院15区では、ラテン・グラミー賞を受賞した歌手ボビー・プリード氏が共和党現職に挑む。同区は24年、トランプ氏が18ポイント差で圧勝。しかし、プリード氏は7月下旬、自身が関与したイベントに大勢が詰め掛ける様子を目の当たりにし、「前回大統領選とは雰囲気が全く異なる」と手応えを口にした。
上下両院の多数派争いでは、テキサスなど激戦州の結果がカギを握る。30年以上にわたりヒスパニック票を研究する選挙戦略家マイク・マドリード氏は、「時の政権与党を罰するような投票行動を取る傾向にあるが、どちらの政党にも強い忠誠心を持たない」と票読みの難しさを指摘。全米人口の約2割を占める大票田だとして、「選挙結果を左右するのは間違いない」と語った。(サンフアン=米テキサス州=時事)。
〔写真説明〕移民税関捜査局(ICE)の拘束から従業員を守るため「立入禁止」の看板が掲げられた住宅建設現場=7月28日、米テキサス州サンフアン
〔写真説明〕不法移民に息子を殺害されたマリー・ベガさん=7月27日、米テキサス州ハーリンゲン
〔写真説明〕取材に応じる米テキサス州下院15選挙区の民主党候補ボビー・プリード氏=7月27日、同州イダルゴ
(ニュース提供元:時事通信社)



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