2016/09/05
奥はる奈のロンドン大学危機管理講座
次に、Q1〜3の分析結果を基に、地図を見ながら、成果や目標を達成するために最適な避難所の設置場所を検討します。川があり、洪水が起こっているのであれば、その川を渡れる橋はあるのか、あるいは橋を簡易に作るのかなど、実現性を検討し、裏付けを固めます。場所が決定すれば、組織ごとの細かな計画、ステップ、作業内容まで落とし込みます。現在あるリソースをどう割り当てるのか、また輸送経路確保や通信手段の確保、医療計画なども検討しました。

常に成果を意識するOOEAという考え方
計画実行のプロセスでは、成果(Outcome)を常に意識することが重要なポイントです。成果(Outcome)を達成するための目標(Objectives)、効果(Effects)、行動(Actions)と掘り下げて考えていった場合も、その成果に繋がるものなのか、と立ち返ること。そうすることでゴールを見失うことなく、意思決定や指揮を取ることができます。それをRGでは、OOEAと呼んでいます。
‘Plans are nothing;planning is everything.’
最後に、印象に残った言葉がありましたので、ご紹介いたします。‘Plans are nothing;planning is everything.’あえてNothing(=意味がない)という言葉を使っていますが、意訳すると、事前の計画はあくまでも計画であり、現場でのプランニングが重要である、というところでしょうか。危機や災害が発生した場合、マニュアルや計画通りにいかないことはみなさん理解されていることかと思います。計画や想定の差はどうあれ、実際に起こっていることに対し、オペレーションを新たに考えなければいけません。リーダーのみならず、他のメンバーについても、どのように対応するのか、とにかくプランニングする能力が必要です。
ではこのプランニングの能力はどうやったら向上するのでしょうか?とにかく練習あるのみ、RGもおっしゃっとていましたが、実際の災害対応もめったにあることではありませんし、今回のような訓練に参加することが理想ではありますが、それもなかなか難しいでしょう。そういう場合は、日常生活の中でも磨くことができると思います。以前、私が本誌vol.39でご紹介した、「ディナーパーティーとBCP」のように、できるだけ身近なイベントに置き換えて考えることです。他にも、平時の仕事やプライベート(例えば旅行先など)で何かハプニングがあったとき、タイムラインやOODAループを思い起こして、対応をプランニングしてみてはいかがでしょうか。
※本文中の図表は、 提供のものを和訳してあります。
RG Rescue Global, a UK Charity and a USA 501(c)(3) not-for-profit, international NGO, specialising in Disaster Risk Reduction and Response and Tristan Winfield, Head of Operations at Rescue Global as lead of the training and presentation author.
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