ピーター・ドラッカーが、「経済的な活動は、現在の資源を不確かな未来に投入することであり、必然的に、企業は不確実性を管理する機能を必要とする*1」と述べているように、企業活動には常に新たなビジネス機会の探索が必要である。しかし、それには不確実性が伴う。したがって企業は、いかにリターンの源泉としてリスクを取り、企業価値を持続的に高めてゆくかに腐心する存在である。
このように企業活動は、社会に付加価値を提供するために将来に向けて働きかけるものであるといえる。将来の具体的なシナリオや結果は誰にも正確に予測できないため、企業活動は失敗による倒産リスク*2を常に孕んでいる。企業の社会的使命である付加価値を提供し続けるためには、付加価値創造の機会を探し続けるのと同時に、倒産を防止し、継続的活動を維持してゆかなければならない。
倒産原因は様々であるが、市場変化の把握遅れや対応力不足、経営判断の誤り、内部管理の不備、不祥事件の発生などが挙げられる。経営者は倒産要因を経営リスクとしてとらえ、的確に対処しなければならない。特に経営環境が大きく変化している状況の下では、変化への対応不備を防止し倒産を未然に防ぎ企業活動を続けるための耐性を向上させるためにリスク管理を強化する必要がある。
会計上の継続企業の再認識
現実の企業は様々なリスクにさらされながら事業活動を営んでいる。今日の会計では、企業が将来にわたって事業活動を継続するとの前提、すなわち継続企業(ゴーイングコンサーン; Going Concern)に関する有用な情報を、投資家をはじめとする利害関係者に提供することを目的としている。
日本では、1990年代後半に企業破綻の事例が相次いで発生した。その中には、監査人が監査報告書で適正意見を表明していた直後に倒産する会社も存在したことから、継続企業の前提に対する会計監査への要請が高まっていた。一方、米国や国際監査基準では、継続企業の前提に関する監査制度が導入されていた。このような中で、企業会計審議会が2002年1月に公表した「監査基準の改訂に関する意見書」で、継続企業の前提の監査に係る規定を導入し、2003年3月決算の財務諸表監査から適用することになった。
売上高の著しい減少や重要な営業損失、経常損失又は当期純損失の計上など継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在する場合には、「当該事象又は状況を解消し、又は改善するための対応策」が財務諸表作成時現在計画されており、効果的で実行可能であるかどうかといった「継続企業の公準」が重視される。
国際会計基準は、企業業績を過去の確定値に基づき報告する収支管理の世界から、将来の価値創造について合理的な予測値に基づく財務報告の世界へと移行させた基準である。現在、これまでの財務情報に加え、いかに非財務情報を取り扱うのかに関する基準の検討を進めている*3。このような動きからわかるように、経営管理が、蓋然性の高い予測の世界から不確実性を所与とした合理的な予測の世界を意識した世界へと変化していることがわかる。
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