「チャイナリスク」はひと昔前から書き換えられている。現在のリスクは何か(写真:Adobe stock)

チャイナリスクの変遷

チャイナリスクという言葉は、いつ頃からいわれるようになったのだろうか。振り返ると、1980年代半ばには「中国経済脅威論」というかたちで発信されていたように、リスクとしてはかなり以前から周知されていた。

リスクがあるからすべてNGというゼロリスク論は論外で、リスクヘッジしながら一定リスクは受容して、さまざまな活動を行うのが現実社会のあり方であるのは常識である。同時にリスクは周辺環境で変化するので、適時評価して許容できる限界を超えないように低減策を新たに検討しなければならない。その評価は部分最適ではなく全体最適で行うべきだ。

中国との経済関係が進展し、同時に依存関係も深まっていった(写真:Adobe stock)

「すべての国が豊かになり、経済の相互依存を高めれば、世界は必ず平和になる」という崇高な理念のもと、中国との経済関係が進展していったのは歴史的事実である。その結果といっていいだろう、中国は経済発展を遂げ、日本のGDPを抜いて世界2位の経済大国になった。当然の結果として、隣国である日本経済の中国依存度は高まっていき、利権構造が深淵化していったのだろう。

そこまで経済の相互依存関係が進展し、果たして平和になったのだろうかという疑問の答えは、すでに国際社会が出している。繰り返し取り上げているが、2023年の米国戦略国際問題研究所(CSIS)で西村経産大臣が行ったスピーチがその現れである。事実として対中緊張、脅威は高まり、経済安全保障のリスクも顕在化してきた。

このリスクは戦争という究極の事態に限らず、これまで中国が国家として取ってきたいわゆる「戦狼外交」のような強硬姿勢が強まる状態も含まれる。「けんか交渉」で対峙された場合、ビジネスにおける基本中の基本である「WinWin」の構造は成立が困難だ。将来的に大きなリスクを抱えることになり、安全が確保された持続可能なビジネス環境とは到底いえない。

強硬姿勢が強まり「けんか交渉」で対峙されると、ビジネスにおける「Win-Win」の関係は難しい(写真:Adobe stock)

もちろんリスクへの対処は、それぞれの企業や組織で考え方が異なるのは当然である。それゆえ、リスクがあるから即ビジネスはNGとまではいえない。だが、だからといってリスクから目を逸らすのは論外である。そこには重い責任がともなうからだ。完全な撤退まではいかなくとも、リスクが顕在化した場合に備えた代替策、ダメージの最小化策は準備しておくべき、従業員らの安全への最大の配慮も必要不可欠だ。

ビジネス面では、十分とは決していえないだろうが、それでも思っている以上に対応は進んでいると感じている。だが、政界とオールドメディアはまったくといっていいほどの状況ではないだろうか。