要配慮者利用施設の災害計画等の作成と確認

これまで、自治体は要配慮者施設の利用者については施設が災害対応し、在宅の要配慮者は自治体が地域住民とともに災害対応するとしていました。このため、要支援者名簿に施設入居者は記載されないのが一般的です。これは、施設には十分な災害対応力があることを前提としています。

しかし2016年台風10号水害で、施設が十分な災害対応力を有していないことが明らかになりました。法令上、施設は災害計画を作成し、訓練することとなっていますが、どのような災害を対象にするかは明確でなく、計画や訓練を自治体が監査することもほとんどなかったのです。この水害での内閣府による福祉施設へのヒアリングでは、間一髪で被害を免れた施設がいくつもありました。ほんのちょっと判断ミスがあれば、もっと大きな被害になった可能性さえあります。

実効性確保の2つの対策

そこで、施設の災害計画、訓練の実効性を確保するために、ガイドライン、検討会報告では新たに2つの対策を記述しています。

一つは、災害計画作成に際しては専門家などの助言を受け、訓練は市町村、消防団、地域住民などと一緒に行うことで、専門性と受援力を高めることです。災害時は特に、人も組織も孤立すると弱くなります。施設、病院、学校、企業等は地域社会につながって助け合うことで災害時の安全性を高めようという方向性です。

もう一つの対策は、定期的な監査時に自治体が災害計画、訓練の実効性を確認することを強調した点です。福祉部局の監査は主に会計監査であり、災害計画の監査はその有無を確認する程度でした。そこで、福祉部局だけでなく防災や土木部局も立ち会って監査することを奨励しました。

ガイドラインの限界

一方で、これでも施設の防災力は大災害には十分ではありません。この水害では、いくつかの被災施設が指定避難所ではなく、自分たちで考えた場所に避難しました。行政は、避難所と言えば小中学校を指定しますが、実際に要配慮者はかなり個別性が強いのです。バリアフリー環境があったり、近いところを選んだりしなければなりません。

避難方法についても、認知症患者、知的や精神の障がい者、視覚障がい者、車いすなど、それぞれ大きく違います。

そうであれば、施設は施設の立地や建物特性、各利用者の個別性に配慮して、計画、訓練、見直しを真剣に行い、実効性を高めなければなりません。さらには、近年の災害の激甚化にも対応するとなると、計画の基準となる被害想定までも超えているわけですから、災害時の施設職員の判断力、対応力を高めることが必要です。

(了)