楽ん楽んの建物には水の跡がくっきりと残っています(2016年10月15日、筆者撮影)

避難情報の変更

2016年8月30日、台風10号により岩手県岩泉町高齢者グループホーム「楽ん楽ん」で9人全員の高齢者が水害で亡くなり、社会に大きな衝撃を与えました。現地に行ってみると、隣地には大きな工場があります。仮に、平常時から施設と合同で避難訓練をしていたならば、きっと高齢者の避難を支援してくれたのではないでしょうか。また、福祉施設も工場に避難支援を頼めたのではないでしょうか。

この災害を受けて、内閣府は2017年1月31日に「避難勧告等に関するガイドライン」を改訂し公表しました。避難情報の名称は変更され、下表の通りです。

旧名称    新名称
避難準備情報 →避難準備・高齢者等避難開始
避難勧告 →避難勧告
避難指示 →避難指示(緊急)

私はこの委員会において、この変更では不十分だと意見を述べました。なぜなら、人には根拠なく自分だけは大丈夫だと思ってしまう、正常性バイアスがあり、「避難準備」だと、まだ逃げなくてよいと受け止めかねないからです。委員会は、結局、原案を承認しましたが、自治体は住民の正常性バイアスを十分に踏まえ、「高齢者等避難開始」に重きを置いて運用しなくてはなりません。

2018年7月の西日本豪雨災害では、避難準備、避難勧告、避難指示などの用語が住民に浸透していないことが明らかになりました。このため今後、レベル3(避難準備・高齢者等避難開始に相当)、レベル4(避難勧告及び避難指示(緊急)に相当)、レベル5(災害が既に発生中)で避難警報を発令する予定です。