2016/05/20
スーパー豪雨にどう備える?
状況に応じた柔軟な意思決定が重要
2004年7月に新潟県や福島県を襲った集中豪雨、通称「7.13水害」で被災した経験をもとに、その後の相次ぐ災害に対応してきた暖房・空調・住宅設備機器メーカーのコロナ。本誌リスク対策.comでは過去に一度、同社の当時の対応を特集で伝えたが、洪水被害の脅威を振り返る上で、同社の事例は外すことができない。現在の対策はどうなっているのか。再び、同社を訪れた。
2004年7月13日、新潟県では、梅雨前線に伴う豪雨により信濃川水系の五十嵐川や刈谷田川、中之島川の堤防が決壊し、広範囲で浸水が発生。県全体で死者15人、家屋全壊70棟、半壊5300棟など大きな被害を出した。
三条市に本社を持つコロナは、近隣を流れる五十嵐川の洪水により、1階部分がほぼ水没するという被害に見舞われた。
堤防が決壊したのは午後1時15分ごろ。川からあふれ出た泥水は、道路から田んぼや畑、そして家屋へと一気に流れ町全体を瞬く間に茶色に染めた。
「何が起きたのか状況が分かりませんでした。(五十嵐川は)昔から暴れ川で、橋が流れたことは何回か見たことがありましたが、まさか堤防が決壊するとは想像もできませんでした」。当時取材に応じてくれた担当者は、洪水発生直後の状況をこう振り返っていた。迅速な判断が会社を救った 最初は社員がモップで水をはき出していたが、水かさは急激に上昇。現場ではあまりの異常さに気付き、即座に会社の入口や通路のドアをガムテープで巻きつけ、少しでも水が入ってくるのを防ぎながら、同時に従業員がパソコンや重要書類を2階に運び上げた。ドアの外は、胸の高さまで濁流が一気に押し寄せ、流れてきた大木などでドアのガラスが飛散。あっという間に1階の半分以上が水没した。
わずか10分足らずの出来事だったが、迅速な判断により、従業員の生命と、30台ほどのパソコン、重要な書類を運び出すことができた。
1階が浸水したことで、変電器はショートし社内は停電。工場でも1階にあった機械はすべて水没した。幸い、同社では2001年から、生産、物流、販売などの情報を管理する基幹システムを新潟市内のデータセンターにアウトソーシングしていたため、システム面での大きな被害は避けることができた。DR(ディザスタ。リカバリー)に加え、現場での適切な判断があったことで、事業への影響を軽減させることができた。
ちなみに、三条市の本社には全従業員1800人のうち600人ほどが勤務していたが、被災当日は、安全性に配慮し、全員を翌朝まで社内に留まらせた。市内の道路は麻痺しており、濁流に飲み込まれる車もあったという。電気もなく蒸し暑い暗闇の中、コミュニティFMからの被災情報や非常食の配達情報はとても助かったと従業員の1人は振り返っていた。従業員は、翌朝には自衛隊のボートによって無事救出された。
本社が完全に復旧したのは8月の盆前。ほぼ1カ月かかったが、これは、経営者からの指示により、会社周辺の復旧作業を優先させたため。地元雇用が多いこともあり、できる限り地域への支援を優先させたという。
スーパー豪雨にどう備える?の他の記事
- 特別寄稿2 リスクアセスメントの偏重
- 特別寄稿1 検証:鬼怒川の大決壊
- 風速80mの台風が日本を襲う!
- 「地下」への雨水流入を遮断 東京地下鉄株式会社
- 洪水の脅威を知る企業の対策 株式会社コロナ
おすすめ記事
-
GX支援のアイ・グリッド 防災・BCPへの訴求を強化
企業向けグリーン電力供給のアイ・グリッド・ソリューションズは、気象災害の激甚化からレジリエンス対策のニーズが高まるとみて、防災・BCP面の訴求を強める考えです。このほど、エネルギーリスクと独立電源に対する意識を調べるため、全国の経営者にアンケート調査を実施。事業継続に加えて地域貢献への意向が強いことがわかりました。
2023/09/21
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2023年9月19日配信アーカイブ】
【9月19日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:未知のリスクに備える
2023/09/19
-
「回復」から「成長」へ 復旧フェーズを格上げ
フッ素樹脂メーカーのニッキフロンは2019 年の台風19号で本社工場機能の大半を喪失。被害と財源を見極め早期に復旧方針を決めると、主要製造ラインの迅速再開と代替生産で出荷の維持に努めました。一時は大幅に売上を落としたものの、取引先などの応援もあって、1年半後には被災前と同レベルに回復、その後は新たな成長フェーズに入っています。
2023/09/18
-
花王のリスクマネジメント改革
1890年に高級化粧石けん「花王石鹸」を発売してから130年以上にもわたり、家庭で愛用される、洗剤を中心としたさまざまな製品を世に送り出してきた花王株式会社。1999年にリスクマネジメント体制を整備した同社は、2016年にリスクマネジメントの改革に乗り出した。現在は、ERM(全社的リスクマネジメント)を展開し、将来直面するだろう未知のリスクにも対応できる体制を整えている。
2023/09/18
-
-
-
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2023年9月12日配信アーカイブ】
【9月12日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:事前対策と初動が機能したBCP事例
2023/09/12
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方