2025/12/04
インタビュー
競争と協業が同居するサプライチェーン
予期せぬ事態に備えた、サプライチェーン全体のリスクマネジメントが不可欠となっている。深刻な被害を与えるのは、地震や水害のような自然災害に限ったことではない。パンデミックやサイバー攻撃、そして国際政治の緊張もまた、物流の停滞や原材料不足を引き起こし、サプライチェーンに大きく影響する。名古屋市立大学教授の下野由貴氏によれば、協業によるサプライチェーン全体でのリスク分散が、各企業の成長につながるという。サプライチェーンにおけるリスクマネジメントはどうあるべきかを下野氏に聞いた。
5つのサプライチェーンリスク
名古屋市立大学教授下野 由貴 氏
(しもの・よしたか)
神戸大学大学院経営学研究科博士後期課程修了。自動車産業や電機産業を対象として企業間取引関係やサプライチェーン・マネジメントを研究。
――サプライチェーンリスクマネジメントが対象とするリスクには、どのような種類がありますか?
サプライチェーンリスクは大きく5つに分類できます。まずは自社に存在するリスクが2つあります。1つはプロセスリスクです。自社の工程に直接影響を与えるリスクで、例えば工場設備の故障や人為的ミスで生産が停止するようなケースが該当します。もう1つはコントロールリスクです。自社工程を制御するシステムや手順の誤用などによるリスクで、例えば受発注量のミスが該当します。
自社以外に存在するリスクには、供給リスクと需要リスクがあります。供給リスクはサプライチェーンの川上、つまり仕入れ先に起因するリスクです。供給能力の不足、納期遅延、品質不良などが含まれます。
一方、自社より川下に存在する需要リスクは、顧客からの需要の急増や急減、市場の変動などが該当します。最後に、企業のコントロールを越えたサプライチェーンの外部に存在する環境リスクがあります。これはサプライチェーン全体に影響を及ぼすもので、社会や政治の混乱、自然災害、景気の変動、新技術の登場などが該当します。これらは、サプライチェーンマネジメント研究の第一人者、英国のクランフィールド大学・マーチン・クリストファー名誉教授による分類です。
――最近のサプライチェーンリスクマネジメントの動向について教えてください。
近年、対象とするリスクと管理範囲が大きく広がっています。従来は一次サプライヤーまでの管理が主流でしたが、現在では「先の先の先」――つまり、サプライチェーンの末端に位置する企業までを含むようになっています。また、対象リスクの拡大については、ESG(環境・社会・ガバナンス)関連リスクが代表的です。温室効果ガスの排出量、廃棄物処理、労働環境の整備、人権侵害など、多様なリスクが管理の対象になっています。
直接的な取引がないサプライヤーで発生したトラブルであっても、その責任が追及されるケースが増えています。これはサプライチェーンという考え方が浸透し、ガバナンスの観点から社会的な要請が高まった結果といえるでしょう。
インタビューの他の記事
おすすめ記事
-
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/09/01
-
-
暗黙知を形式知へ、10年の徹底改善が生きた
熊本市の工務店・新産住拓株式会社(小山英文社長)は、2016年の熊本地震や近年相次ぐ豪雨災害を通じて災害対応を磨き上げてきた。発生当日は、約3割の社員が定休日で社長も不在という条件下にもかかわらず、地震発生から50分で社員の安否確認をおおむね完了し、2時間後にはホームページや顧客専用サイトで被害受付を開始した。
2026/08/24
-
-
-
-
-
-







※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方