2019/06/13
福祉と防災
支援多い団体は要請なくとも活動
次に全国社会福祉協議会職員で、JVOADシニア・コンサルタントの園崎秀治さんが次のように報告されました。
・JVOAD福祉支援専門委員会準備会を2018年5月に立ち上げ、様々な支援活動者に声掛けをし、勉強会を重ねてきた。
・福祉支援の体制は近年、整備され始めてきたが、多種多様かつ多数の専門組織があり、その連携が大きな課題といえる。
・2018年の西日本豪雨では倉敷地域災害保健復興連絡会議(kuraDRO)が立ち上がり、医療関係者に加え、保健、福祉関係者も出席し医療で完結できない福祉的ニーズが必要との認識も共有されつつあった。
・これからの福祉支援は、福祉関係者のネットワークづくり、医療、保健。看護等の近接領域との連携、そのような連携を促すコーディネータの養成、途切れない支援体制、そして地域支え合いセンター等による長期的支援が重要となる。
3番目に、関西大学の菅磨志保准教授からJVOAD福祉支援専門委員会準備会による「災害時の福祉支援活動と対応体制に対するアンケート調査」の概要が報告されました。このアンケートは、日本ソーシャルワーク教育学校連盟の杉本美奈子氏、早坂佳恵氏らの膨大な作業により行われたことに謝意が示されました。災害時の福祉支援について、議論の土台となる多様な団体の支援実態を把握するため、485件の団体にウェブ調査を行い、回収数は64件、回収率13.1%だった。調査結果から、特徴的な傾向は次の通り。
・支援回数が多い団体は何らかの要請でなく自主的に活動
・被災地の(受援)組織が非被災地の(支援)組織よりも時間が経過してから支援活動をしている傾向がある
・巡回支援活動は、被災地(受援)組織のほうが多い
浜松医科大学の尾島俊之教授の研究を引用して、医療では通院患者数4811万人に対し、医師は32万人、看護師が115万人。要介護(要支援)認定者632万人に対し介護職員が183万人。災害時にはこれ以上の受援ニーズが顕在的、潜在的に発生するため、支援が追い付いていない可能性が高い。
4人目に、群馬県災害派遣福祉チーム(ぐんまDWAT)の鈴木伸明氏が報告しました。
・群馬県災害福祉支援ネットワークは、2014年7月に検討会を立ち上げ、2016年3月に施設間相互応援協定を締結して、専門職支援部会を設置し、2017年4月にDWAT先遣隊の募集を行って研修を重ねてきた。
・2018年8月に初めて岡山県にDWATとして派遣が行われた。実際の活動は、多様な相手と連携して、福祉に限定しないなんでも相談、保健師との巡回、集いの場の運営、生活環境改善、子どもへの支援、その他寄り添い支援など。
最後に、日本ソーシャルワーク教育学校連盟事務局長の小森敦氏が、全国災害福祉支援連絡協議会(災福協)の立ち上げにむけた動きを報告しました。
・東日本大震災において福祉関係団体が行った支援活動をまとめ「災害ソーシャルワーク入門」を刊行。テキストを作成して、災害福祉支援活動基礎研修を関係団体と共同開催した。
・福祉の職能や教育団体の組織特性を活かしつつ、連携・ネットワーク協議体を作り、支援活動の効率化、支援の量の最大化を図れないかと考えている。
■関連記事「官民連携の災害支援推進を」
https://www.risktaisaku.com/articles/-/17448
(了)
福祉と防災の他の記事
おすすめ記事
-
-
備蓄燃料のシェアリングサービスを本格化
飲料水や食料は備蓄が進み、災害時に比較的早く支援の手が入るようになりました。しかし電気はどうでしょうか。特に中堅・中小企業はコストや場所の制約から、非常用電源・燃料の備蓄が難しい状況にあります。防災・BCPトータル支援のレジリエンスラボは2025年度、非常用発電機の燃料を企業間で補い合う備蓄シェアリングサービスを本格化します。
2025/04/27
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方