2012/03/25
誌面情報 vol30
日産自動車では、エンジンを製造するいわき工場(福島県いわき市)が東日本大震災で甚大な被害を受けた。 工場内の被災に加え、サプライヤーの被災、さらには放射能汚染への不安が高まる中、本社対策本部を中心 とした全社的な支援により、目標としていた 6 月中旬の計画よりも約 1 カ月早く事業再開にこぎつけた。
■2 度の地震と退避指示
いわき工場は、国内外で販売する高級車向けのエ ンジン製造を担い、年間 37 万機のエンジンを生産 する同社の主力拠点の1つ。3月 11 日の地震では、 震度 6 弱の強い揺れにより、電気を除くすべてのイ ンフラがストップしたほか、工場内では天窓、配管 類が落下するなどの被害が発生した。施設内で働く 従業員は全員無事だったが、工場内に入るのも危険 な状態だった。4日後の 15 日には、市から放射能 汚染の影響により市内全域に屋内退避指示が出さ れ、4 月 11 日には再び震度6弱の余震が発生し、いわき工場の復旧の道のりは3カ月以上がかかること が予想された。
■10 部署による初動対応チーム
3 月 11 日、横浜市にある日産本社では、震災直後 から COO(最高執行責任者)の志賀俊之氏を本部 長とした対策本部を立ち上げ、事業継続に向けた活 動を開始した。
同社では、事業所の所在地で震度5強以上の地震 が発生した場合は、渉外部をセンター機能とした 10 部署による初動対応チームが速やかに情報収集を開始する(図1) 。
震災当日も、この初動対応チームが中心となって 安否の確認、被災状況の把握などにあたった。全社 体制の災害対応は、毎年訓練はしていたものの、実 際に本社と現地に対策本部を設置して対応するのは今回が初めての試みとなった。幸運だったのは、同 社では震災の 3 週間前に首都圏直下地震を想定して BCP 訓練を行っていたことだ。 「直前のシミュレー ション訓練を通して、各部署が危機発生時に何をす べきかわかっていたため、速やかに対策本部が設置できました」と震災当時、対策本部のメンバーの 1 人だった同社渉外部主担の中込健司氏は話す。 本社の対策本部は、 本部長以下、 各部門のリーダー など 100 人ほどのメンバーで構成される(前ページ の図1) 。これほど多くの人数を確保している理由 は、 部署ごとに震災対応の役割を決めるのではなく、 対策本部の機能ごとに各部署から災害種別や規模に 応じて動員できる人数を割り当てているためだ。特 に、生産や購買など専門知識が求められる製造部門 からは、多くの専門スタッフが対策本部のメンバー として関わる。より正確な情報が本部に上がること で、即断・即決が求められるトップの判断決定を助 けることにつながる。
誌面情報 vol30の他の記事
- サイバー脅威への備え
- 100人体制の対策本部/1カ 月を前倒しで全面復旧を実現
- 5つの機能で組織を守る
- 特別寄稿 ハラルド・ドラッガー氏 (TIEMS 会長)
- クライシスコミュニケーションの要求を強化
おすすめ記事
-
令和8年熊本地震 猛暑の被災地で熱中症を避ける
最大震度7を記録した令和8年熊本地震。熊本県内では400超の避難所が開設され、約9千人が避難している(29日時点)。真夏の避難生活は、熱中症の危険性を確実に高める。しかもこれからは、猛暑・酷暑下での復旧活動が本格化し、多くの人々が被災地で活動する。現地で熱中症をどう防いだらいいか。熱中症と災害医療に詳しい、さいたま赤十字病院高度救命救急センターの席 望医師に対策を聞いた。
2026/07/30
-
令和8年熊本地震 広がるデマ、どう見分ける?SNSとの向き合い方
28日に発生した最大震度7を記録した熊本地震では、早くも豪華寝台列車「ななつ星」が脱線したなどのデマ情報が広く拡散された。災害のたびに、広くSNSで拡散される情報にどう向き合えばいいか。デジタル空間の情報分析を専門とする Japan Nexus Intelligence の竜口七彩氏に聞いた。
2026/07/29
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2026/07/28
-
-
事例研究で有事に備え、組織の体質改善で形骸化を防ぐ
組織レジリエンスの強化やサイバーセキュリティーの向上、サプライチェーンの強靭化など、危機管理やリスク管理担当者が関与する領域は年々拡大している。変化する社会状況にあわせ、担当者はどのように学び、備え、対応することが求められるのか。森総合研究所代表の森健さんは、自治体と企業で危機管理担当者としての経験を積み、現在はコンサルタントとして、企業や団体の危機管理の支援を手がけている。自身の経験を踏まえ、危機管理の担当者にどうアドバイスしているのか、話を聞いた。
2026/07/27
-
-
-
-
-









※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方