2016/11/10
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』
2、燃焼の知見
次に、今回の展示物がどれだけ燃焼しやすいものか、見ただけで感じてもらいたかったです。キャンプや焚き火を経験した人ならわかるでしょう。どうみても、キャンプファイヤーと同じです。火をすばやく、長く燃焼させる構造です。
木材と木くずが使われていたからというだけではありません。「ものの燃え方」という単元で、実は小学校6年生だと誰もが知っていることを多くの人は実感として感じていないのではないかと思っています。
6年生のはじめにこんなことを習います。
■NHK for school 「ふしぎがいっぱい6年生」2016年第1回「もえる」
http://www.nhk.or.jp/rika/fushigi6/?das_id=D0005110061_00000
燃えるために何が必要かということで、空気(酸素)が大事ということが丁寧に説明されています。
でも、ペーパーテストでは酸素と答えられる人でも、焚き火初心者は学歴に関係なく、ひたすら炭をつっこんだり、紙を入れたりして火を起こそうとする方が多いです。挙げ句の果てに着火剤を大量に入れて誤魔化しながら火起こしします。
酸素の大切さを体感として感じていないのでしょう。火を使える世代の人は必ず隙間をつくり、風をおくります。うちわであおぐ、ふいごを使うなど、酸素を送ることが重要と体感しています。
木材を上に重ねただけでは、火は長く続きません。しかし、風が通り、酸素供給が途絶えないジャングルジム構造は、井桁に組んだキャンプファイヤー同様に燃えやすくなってしまいます。
事件当日の風は15時の段階で風速3mでした。(「ヤフー天気」)
http://weather.yahoo.co.jp/weather/jp/past/13/4410/detail.html?c=2015&m=11&d=6
16時40分の日没から投光器を点けたとのことですが、日没だとなおさら風が冷たく感じていたはずです。その時点で風速3mであれば体感温度は、3度低かったことでしょう。風を感じたら「あれ、この構造で風があれば、空気を供給し続けるから容易に燃焼し短時間で燃え広がる・・」となぜ、気づかなかったのか、残念でなりません。
ちょっとでも、どこかで焚き火を体感していたならば、展示物は、絶対熱源を置いてはいけないと見ただけでわかったはずです。置いた時点で気付かなくても風を感じた時点でピンときたはずです。白熱電球の問題もありますが、LEDだったとしても熱は発生するので、この構造で木くずの中に置いたなら燃焼したかもしれません。タバコの火の不始末や静電気などでも発火の可能性があったかもしれません。
木くずが粉々になると粉塵爆発もありえます。ジャングルジムという空気が絶え間なく供給できる構造から燃焼の可能性を感じないのは、体験として学んでいないからではないか・・そんな印象を受けました。
アウトドア防災ガイド あんどうりすの『防災・減災りす便り』の他の記事
おすすめ記事
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月16日配信アーカイブ】
【4月16日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:熊本地震におけるBCP
2024/04/16
-
調達先の分散化で製造停止を回避
2018年の西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町。オフィス家具を製造するホリグチは真備町内でも高台に立地するため、工場と事務所は無事だった。しかし通信と物流がストップ。事業を続けるため工夫を重ねた。その後、被災経験から保険を見直し、調達先も分散化。おかげで2023年5月には調達先で事故が起き仕入れがストップするも、代替先からの仕入れで解決した。
2024/04/16
-
工場が吹き飛ぶ爆発被害からの再起動
2018年の西日本豪雨で隣接するアルミ工場が爆発し、施設の一部が吹き飛ぶなど壊滅的な被害を受けた川上鉄工所。新たな設備の調達に苦労するも、8カ月後に工場の再稼働を果たす。その後、BCPの策定に取り組んだ。事業継続で最大の障害は金属の加温設備。浸水したら工場はストップする。同社は対策に動き出している。
2024/04/15
-
動きやすい対策本部のディテールを随所に
1971年にから、、50年以上にわたり首都圏の流通を支えてきた東京流通センター。物流の要としての機能だけではなく、オフィスビルやイベントホールも備える。2017年、2023年には免震装置を導入した最新の物流ビルを竣工。同社は防災対策だけではなく、BCMにも力を入れている。
2024/04/12
-
民間企業の強みを発揮し3日でアプリ開発
1月7日、SAPジャパンに能登半島地震の災害支援の依頼が届いた。石川県庁が避難所の状況を把握するため、最前線で活動していた自衛隊やDMAT(災害派遣医療チーム)の持つ避難所データを統合する依頼だった。状況が切迫するなか、同社は3日でアプリケーションを開発した。
2024/04/11
-
-
組織ごとにバラバラなフォーマットを統一
1月3日、サイボウズの災害支援チームリーダーである柴田哲史氏のもとに、内閣府特命担当の自見英子大臣から連絡が入った。能登半島地震で被害を受けた石川県庁へのIT支援要請だった。同社は自衛隊が集めた孤立集落や避難所の情報を集約・整理し、効率的な物資輸送をサポートするシステムを提供。避難者を支援する介護支援者の管理にも力を貸した。
2024/04/10
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年4月9日配信アーカイブ】
【4月9日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:安全配慮義務
2024/04/09
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方