2016/12/05
リオ五輪から学ぶ 日本の危機管理を高めるヒント
オリンピック警備のために動員された要員は、オリンピック史上最大規模の8万5000人に上る。
日本と違い、連邦制国家であるブラジルの警備体制は複雑だ。警察だけでも、連邦警察、州警察に加え、各州の軍警、さらには国家治安部隊(フォルサ・ナシオナル・ジ・セグランサ)と呼ばれる特殊部隊が存在する。国家治安部隊はブラジル全州から選抜された州警察、軍警、消防で構成される混成組織で、連邦警察で特別な訓練を受け任命を受けた者9600人が全州に配置されている。五輪期間中はこのうち約6000人の国家治安部隊が招集され、競技会場やリオ市内の警備に当たった。ここに陸・海・空の軍隊、さらに民間警備員が加わる。
こうしたさまざまな組織が連携して、オリンピックの安全確保にあたれるよう、ブラジルでは2009年のオリンピック開催決定時から、制度や組織面における整備を進めてきた。
まず、オリンピック大会の開催を決定する公式文書の中に、ブラジル政府として、大会の警備運営に関する連邦、州、地方自治体の調整に責任を持つことを明記した。この目的を達成するために、ブラジルは、法務省の直下に、大規模イベントにおける安全管理特別事務局SESGE(Special Secretariat forSafety and Security at Major Events)を設置。2015年9月には、今回のオリンピック・パラリンピックに向けた戦略的統合警備計画SISP(Strategic Integrated Security Plan)を発表し、五輪期間中における関係機関の使命・任務、行動の領域、戦術的な運営計画などを明確にした。
さらに、SESGE では、主要なイベントにおいて、関係機関が連携した指揮統制を行えるよう統合コマンド・コントロール・システムSICC(Integrated Public Security Command and Control System for Major Events)を構築し、それに基づき、大規模イベント中に国家と地域レベルが連絡を取り合いながら対応にあたれるよう統合コマンド・コントロール・センター(CICC:integrated centers of command and control sector)を首都ブラジリアとリオデジャネイロなどの主要都市に整備した。
リオ五輪から学ぶ 日本の危機管理を高めるヒントの他の記事
おすすめ記事
-
-
社長直轄のリスクマネジメント推進室を設置リスクオーナー制の導入で責任を明確化
阪急阪神ホールディングス(大阪府大阪市、嶋田泰夫代表取締役社長)は2024年4月1日、リスクマネジメント推進室を設置した。関西を中心に都市交通、不動産、エンタテインメント、情報・通信、旅行、国際輸送の6つのコア事業を展開する同社のグループ企業は100社以上。コーポレートガバナンス強化の流れを受け、責任を持ってステークホルダーに応えるため、グループ横断的なリスクマネジメントを目指している。
2025/11/13
-
リスクマネジメント体制の再構築で企業価値向上経営戦略との一体化を図る
企業を取り巻くリスクが多様化する中、企業価値を守るだけではなく、高められるリスクマネジメントが求められている。ニッスイ(東京都港区、田中輝代表取締役社長執行役員)は従来の枠組みを刷新し、リスクマネジメントと経営戦略を一体化。リスクを成長の機会としてもとらえ、社会や環境の変化に備えている。
2025/11/12
-
入国審査で10時間の取り調べスマホは丸裸で不審な動き
ロシアのウクライナ侵略開始から間もなく4年。ウクライナはなんとか持ちこたえてはいるが、ロシアの占領地域はじわじわ拡大している。EUや米国、日本は制裁の追加を続けるが停戦の可能性は皆無。プーチン大統領の心境が様変わりする兆候は見られない。ロシアを中心とする旧ソ連諸国の経済と政治情勢を専門とする北海道大学教授の服部倫卓氏は、9月に現地視察のため開戦後はじめてロシアを訪れた。そして6年ぶりのロシアで想定外の取り調べを受けた。長時間に及んだ入国審査とロシア国内の様子について聞いた。
2025/11/11
-
中澤・木村が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/11/11
-
-
-
第二次トランプ政権 未曽有の分断の実像
第二次トランプ政権がスタートして早や10カ月。「アメリカ・ファースト」を掲げ、国益最重視の政策を次々に打ち出す動きに世界中が困惑しています。折しも先月はトランプ氏が6年ぶりに来日し、高市新総理との首脳会談に注目が集まったところ。アメリカ政治に詳しい上智大学の前嶋和弘教授に、第二次トランプ政権のこれまでと今後を聞きました。
2025/11/05
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2025/11/05
-





※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方