2016/12/05
リオ五輪から学ぶ 日本の危機管理を高めるヒント
統合コマンド・コントロール・センター
2013年にリオデジャネイロ市の中心地域に完成した統合コマンド・コントロール・センター地域拠点(CICC-R:Regional)では、大規模なイベントが行われる時には大会の準備段階から州や政府機関、州警察、軍警、消防、ハイウェイポリスなど、さまざまな関係機関の担当者が集い、大会に向けた情報収集やビデオ監視にあたっている。ブラジリアに設置されている国の統合コマンド・コントロール・センター(CICC-N: National)や、統合テロ対策センター(CIANT: Integrated Anti-terrorism Center)、国際警察連携センター(CCPI: International Police Cooperation Center)ともつながっており、さらに、デオドロ、マラカナン、コパカバーナ、バーラ地区に設置された地区の統合コマンド・コントロール・センター(CICCS)や、会場ごとに設置された会場統合セキュリティ・センター(CISI)とも情報が取り合える仕組みになっている。日本に例えるなら、ある大きなイベントのために、国の災害対策本部と都道府県、開催都市、さらには開催地区の対策本部がシステム的につながっているようなイメージだ。
一方、リオデジャネイロ市でも、オリンピックに向け2010年12月に市独自のコントロール・センターを開設した。こちらは平時から市の危機管理を統括する常設機関として、24時間365日体制で市や州の関係機関、ライフラインなどの民間企業らと連携しながら気象予報や交通状況などの監視にあたっている(別記事参照)。
そして今大会の運営主体であるリオ2016オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(リオ2016組織委員会)でも大会全般に関わる情報を把握し、大会運営の管理を行うメイン・オペレーション・センター(MOC)をオリンピックパーク内に設置し、各会場とMOCをつなぐネットワークを構築した。

このように、政府、市、組織委員会それぞれが独自の指揮統制および運営管理のネットワークを組み上げるとともに、それらを網の目のように結びつけることで、大会運営に関わるさまざまな情報が必要に応じて共有できる体制を整えた。
リオデジャネイロでは、2007年に南北アメリカ大陸の国々が参加するパンアメリカン競技大会が開催されたのを皮切りに、2011年には軍の国際スポーツ大会、2013年にはFIFAコンフェデレーションズカップ、2014年にはFIFAワールドカップと、国際的な大規模イベントが次々と開催された。こうした中でオリンピックに向け、新たな制度やシステムについて繰り返し検証・改善を行うことで、各機関が確実に連携できるようになったことこそブラジルにとっての最大のレガシーと言える。
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