■捜索・救助活動における統一的な活動表示(マーキング)方式

捜索活動は救助者がいかに早く要救助者の位置を特定できるかにかかっている。また活動効率を上げるためにも2度手間は避けなければならない。そのためには捜索した痕跡を現場にしっかりと表示しなければならない。 

2014年4月22日に消防庁から「大規模災害時の検索救助活動における統一的な活動表示(マーキング)方式の導入について」という通知が発表された。これは、東日本大震災での教訓を踏まえ、今後国内で発生した大規模災害時において、消防機関が自衛隊、警察、海上保安庁等の関係機関と連携して活動する現場で使用する統一的な活動表示方式を標準化しようとする通知だ。

※米国連邦緊急事態管理庁のアーバン・サーチ・アンド・レスキュー・システム(FEMA US&R)に準拠したマーキング方法とは異なるため注意が必要だが、日本の読者のためには国内で指針が出たマーキング方法を紹介することにする。

【標示手順】

 

(1) 手順1到着時の標示

概ね1m四方の正方形を描く。なお、構造物の状況により標示可能な場所が狭い場合などは、状況に合わせ、後に表記する文字等が識別できる範囲内で適宜大きさを調整して差し支えない。

(2) 手順2活動開始時の標示

正方形の枠内に、以下の情報を表記する。

ア) 活動隊名:活動隊名を表記する。緊急消防援助隊が出場する災害時については、隊名と併せて都道府県名を表記する。なお、スプレーペンキで記載したときに、読み取りにくくなる恐れがある場合には、平仮名やカタカナでの表記も考慮する。

イ) 活動開始日時:「00年0月0日T時S分」の要領で表記する。年は西暦、時間は24時間表記とする。

ウ) 進入の可否:進入しても危険がない場合は「可」危険、な場合は「不可」と表記する。


(3) 手順3活動中の標示

正方形の枠外に、以下の情報を表記する。

ア) 危険情報:活動上の危険及び障害となる情報を正方形上部に表記する。

イ) 行方不明者(要救助者)数:情報収集により把握した行方不明者数(要救助者数)を正方形底部に表記する。正確な情報を得られず、不確定または不明な場合には「?」を表記する。

ウ)(生存)救出者数:救出した要救助者のうち、エに該当しない要救助者数を、正方形左側部に表記する。

エ) 遺体収容数:救出した時点において社会死状態または医師により死亡と診断された要救助者数を、正方形右側部に表記する。


(4)手順4活動終了時の標示

活動を終了し、撤収する際に以下の情報を表記する。

ア)  活動終了日時:活動開始日時と同様の要領で、正方形枠内の活動開始日時の下に表記する。

イ)  活動の終了(円):活動を終了し撤収する場合は、手順4までに表記した標示全体を囲む円を描く。行方不明者の総数が不明のまま撤収する場合や、要救助者が確認されているが自己隊の資機材等では救出ができないまま撤収する場合にも、活動終了を示す円を描く。

ウ)  全ての行方不明者(要救助者)の救出完了(水平線):全ての行方不明者(要救助者)が救出され、その現場での検索救助活動を完了した場合には、標示全体に水平線を引く。


(5)進入が不可であった場合の標示

活動開始時に進入の可否を調査した結果、進入不可であった場合は、以下の情報を表記する。

ア) 活動隊名
イ) 活動開始時間
ウ) 進入不可である旨
エ) 危険情報(進入不可と判断した主要因)
オ) 行方不明者(要救助者)数
カ) 活動終了日時
キ) 活動の終了(円)

https://www.fdma.go.jp/emergency_rescue/kyukyu_kyujo_tuchi/2014/20140422-1.pdf

※下記は米国連邦緊急事態管理庁のアーバン・サーチ・アンド・レスキュー・システム(FEMA US&R)に準拠したマーキング方法

 

(後編へ続く)

参考文献:
・総務省消防庁「大規模災害時の検索救助活動における統一的な活動表示(マーキング)方式の導入について」(平成26年4月22日付)
・COMMUNITY EMERGENCY RESPONSE TEAM. Basic Training Instructor Guide.FEMA.DHS
・市民救助隊養成講座テキストブック

(了)