2020/06/29
WITHコロナのBCP
兵庫県立大学環境人間学部・大学院環境人間学研究科教授の木村玲欧氏は、「首都圏を中心としたレジリエンス総合プロジェクト(総括:国立研究開発法人 防災科学技術研究所 首都圏レジリエンス研究センター長 平田 直氏)」と連携し、主に兵庫県内企業らを対象に「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に係わるBCP(事業継続)に関する緊急調査」を実施した。調査期間は、緊急事態宣言が出されていた5月19日から5月末まで。COVID-19に対する企業などの対応の流れを時間軸でとらえ、現時点での感染対策や事業継続に向けた取り組みレベル、経営への影響、さらには組織に従事する個人の心的負担などについて明らかにすることが目的。その結果、首都圏を対象にした調査結果に比べ、テレワークの実施率は低く、出張・移動などについても完全に禁止している企業の割合が少ないなど、緊急事態宣言下であるのにもかかわらず、中小企業においては、なかなか対策を実施・徹底することができていない事実が明らかになった。背景としては、そもそも地震についてのBCP(事業継続計画)の策定率が低いなど、災害時の危機管理に意識や資源が向いていなかったことも一因と考えられる。
昼食についても規制
全国を対象に緊急事態宣言が発出されていた調査開始時点において、各職場での感染防止策はどの程度行われていたのか。
調査では、まず、職場での対策(出勤ならびに昼食)について、1.実施していない、2.推奨している、3.義務付けている、4.職場の出勤者はいない、の4段階のどれにあてはまるか聞いた。その結果、時差出勤の実施、出勤方法の変更、昼食の規制について、いずれも実施していないと、実施しているが均衡した(グラフ1)。
主に首都圏内の企業を対象にした調査では、昼食の規制を実施している回答は少なかったが、多くが出社をして、会社内で食事をしている様子がうかがえる。
それを裏付けるように、出勤形態については、テレワークは部分的に取り入れられはじめているものの、原則全員が感染予防を徹底し出勤という企業が25.3%、三密を避け出社も20.3%あった(グラフ2)。首都圏などを対象にした調査では両方合わせて16%だったことからテレワークの実施率が大幅に低いことが明らかになった。
WITHコロナのBCP の他の記事
- 進む感染防止策と事業継続における課題
- 進む感染防止策と事業継続における課題
- 進む感染防止策と事業継続における課題
- 感染症対応計画を作っていた組織とそうでない組織の差
- 緊急事態宣言の解除後も在宅勤務を続けますか?
おすすめ記事
-
-
-
3線モデルで浸透するリスクマネジメントコンプライアンス・ハンドブックで従業員意識も高まる【徹底解説】パーソルグループのERM
「はたらいて、笑おう。」をグループビジョンとして掲げ、総合人材サービス事業を展開するパーソルグループでは、2020年のグループ経営体制の刷新を契機にリスクマネジメント活動を強化している。ISO31000やCOSO-ERMを参考にしながら、独自にリスクマネジメントの体制を整備。現場の業務執行部門(第1線)、ITや人事など管理部門(第2線)、内部監査部門(第3線)でリスクマネジメントを推進する3線モデルを確立した。実際にリスクマネジメント活動で使っているテンプレートとともに、同社の活動を紹介する。
2024/07/23
-
インシデントの第一報を迅速共有システム化で迷い払拭
変圧器やリアクタなどの電子部品や電子化学材料を製造・販売するタムラ製作所は、インシデントの報告システム「アラームエスカレーション」を整備し、素早い情報の伝達、収集、共有に努めている。2006年、当時社長だった田村直樹氏がリードして動き出した取り組み。CSRの一環でスタートした。
2024/07/23
-
「お困りごと」の傾聴からはじまるサプライヤーBCM支援
ブレーキシステムの開発、製造を手掛けるアドヴィックスは、サプライヤーを訪ね、丁寧に話しを聞くことからはじまる「BCM寄り添い活動」を2022年度から展開している。支援するのは小規模で経営体力が限られるサプライヤー。「本当に意味のある取り組みは何か」を考えながら進めている。
2024/07/22
-
-
危機管理担当者が知っておくべきハラスメントの動向業務上の指導とパワハラの違いを知る
5月17日に厚生労働省から発表された「職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、従業員がパワハラやセクハラを受けていると認識した後の勤務先の対応として、パワハラでは約53%、セクハラでは約43%が「特に何もしなかった」と回答。相談された企業の対応に疑問を投げかける結果となった。企業の危機管理担当者も知っておくべきハラスメントのポイントについて、旬報法律事務所の新村響子弁護士に聞いた。
2024/07/18
-
基本解説 Q&A 線状降水帯とは何か?集中豪雨の3分の2を占める日本特有の現象
6月21日、気象庁が今年初の線状降水帯の発生を発表した。短時間で大量の激しい雨を降らせる線状降水帯は、土砂災害発生を経て、被害を甚大化させる。気象庁では今シーズンから、半日前の発生予測のエリアを細分化し、対応を促す。線状降水帯研究の第一人者である気象庁気象研究所の加藤輝之氏に、研究の最前線を聞いた。
2024/07/17
-
-
災害リスクへの対策が後回しになっている円滑なコミュニケーション対策を
目を向けるべきOTリスクは情報セキュリティーのほかにもさまざま。故障や不具合といった往年のリスクへの対策も万全ではない。特に、災害時の素早い復旧に向けた備えなどは後回しになっているという。ガートナージャパン・リサーチ&アドバイザリ部門の山本琢磨氏に、OTの課題を聞いた。
2024/07/16
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方